女子栄養大学・短期大学部HOME > 大学・短期大学部紹介 > 栄養学部・実践栄養学科

私の卒業研究(栄養学部・実践栄養学科)

研究分野
メタボリツクシンドロームの治療
卒業研究テーマ
栄養相談にかける時間による
栄養指導効果の検討
 

時間の関係性を調べるうちに、
相手の思いを汲み取る
意志疎通の大切さを実感した。

ゼミナール

 糖尿病や高血圧などの生活習慣病は、適正な栄養管理と食事の摂取で予防することが可能です。現に医療の現場では、管理栄養士による栄養指導の効果が期待されています。そこで私たちは、栄養相談にかける時間の差による効果の違いを調べ、効率的な指導方法に関する検証にトライしました。
 調査の実施場所は、駒込キャンパスにある医療施設「栄養クリニック」。メタボリックシンドロームにあたる男性22名に対し、11名の若手の管理栄養士が2名ずつ栄養指導を行います。被験者2名の違いは、指導の所用時間。1名は30分、もう1名は90分かけて実施します。つまり、60分の差で指導効果に違いが現れるのか突きとめようとしたわけです。
 実施回数は全部で3回。月に1回のペースで栄養指導を行い、初回と最終回で、体重や周囲、そして血液の数値を計測。また栄養指導の様子をピテオに撮って、つぶさに分析しました。もちろん、被験者へのアンケートも、重要な分析材料です。
 結果としては、30分と90分の栄養指導でどちらも体重や血圧、コレステロール、中性脂肪などで改善されたものの、数値の顕著な差は認められませんでした。ただハッキリわかったのは初回相談の重要性です。やはり、人と人。コミュニケーション能力に長けた人ほど被験者から正確な情報を引きだしていたようです。
 病院、給食施設、薬局と、卒業後は4人それぞれの道ヘ進みます。しかし、この卒業研究で得たものは、必ず栄養指導の現場で活かされると信じています。

私の研究室

教授 田中明
 
研究室名
臨床栄養医学研究室
教授
田中 明(たなか あきら)
プロフィール
東京医科歯科大学医学部医学科卒業。
医学博士。
東京都立府中病院内科医長、
東京医科歯科大学第三内科講師を経て、
平成19年より現職。
栄養クリニック所長。

動脈硬化によって引き起こされる病気のメカニズムを、
糖尿病・脂質異常症の観点から研究。

 私の研究テーマは、動脈硬化が原因となって起こる心筋梗塞、狭心症、脳卒中といった病気の発症メカニズムを、糖尿病、脂質代謝異常の観点から探っていくことです。レムナントリポ蛋白、小粒子LDLコレステロール、アポリポ蛋白B48などの脂質の異常は動脈硬化を引き起こす原因となりますが、これらの測定法は我が国で開発され、私はこれらの開発に携わってきました。また、アメリカ・タフツ大学で50年以上にわたって続けられてきた住民検診でこれらの脂質を測定し、そのデータから得られた研究結果を多数の論文にまとめてきました。
 動脈硬化を引き起こすこれら脂質の測定結果を検討して、摂取しても脂質を上げない食品の製品化を、企業との共同研究によって実現してきました。また、駒込キャンパスにある医療施設「栄養クリニック」では40年以上にわたって、いわゆるメタボリックシンドロームと診断された方の、食事・運動指導を行っていますが、減量に成功した人たちの脂質代謝異常の変化を検討して、減量することによって本当に動脈硬化のリスクは下がるのかも検証してしいます。
 生活習慣病という言葉もあるように、動脈硬化は遺伝のみでなく食事や運動といった生活習慣の乱れによってリスクが高まるものです。そのメカニズムを究明していくことで、これからも病気の予防・治療に貢献していきたいと思います。