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世界おいしい旅 vol.3

ロンドン ~イングリッシュブレックファスト編~

2017.07.19 連載コラム
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 “To eat well in England, you should have a breakfast three times a day.”
 「イギリスで美味しい食事がしたければ、1日に3回朝食をとればいい」

 これは、サマセット・モームというイギリスの小説家が残した有名な言葉だそうです。
「イギリスの食事=“まずい”」という不名誉な評判がある中で「美味しい」と評される朝食。 イギリスでは日本でいうところの「朝定食」のことを「イングリッシュブレックファスト」、 「フル・イングリッシュブレックファスト」、“すべての食材に火を通す”というところから 「フライアップ(Fry-up)」などと呼び、ホテルや街中のカフェなどで提供しています。
※以降、統一して「イングリッシュブレックファスト」と呼ぶこととします。

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ロンドンの街中にあるカフェで食べた朝食
右上から時計回りにチップス(フライドポテト)、ベイクドビーンズ、ベーコン、ソーセージ、目玉焼き、ブラックプティング

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トーストは、三角にカットされていることが多かったです(写真は3人分)

 「イングリッシュブレックファスト」という名で提供されるものは、トースト、ベイクドビーンズ、ベーコン、ソーセージ、卵料理、焼きトマトが定番。 店によって、これら定番の品に、マッシュルームのソテーや、ブラックプディング、じゃがいも料理などが加わります。 イギリスの伝統的な料理が載っている本にも、「The Full English」という朝ごはんの項目があり、 ソーセージの焼き方や目玉焼きの焼き方などが細かく書いてありました。
 その料理本によると、イングリッシュブレックファストの起源は、ビクトリア朝時代。貴族や富豪などの裕福な上流階級社会では、ベーコンやソーセージ、 パイ、キッパーズ(ニシンの燻製)、エビ、当時貴重だったスパイス類をたくさん使った料理や野菜類、果物などたくさんの料理をビュッフェ形式で用意し、 朝から豪華な食事をとっていました。一方、中産階級社会では、質素倹約が流行していたそうで、前日に残ったマッシュポテトやローストチキン、 使いきれなかった野菜をリメイクする「バブルアンドスクイーク」というイギリス版お好み焼きのようなものが、よく作られていました。
 その後、一般庶民にまでボリュームのある朝食が定着し、現在、知られているような「イングリッシュブレックファスト」が広まったといわれています。

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別のカフェでは、チップスとブラックプティングの代わりにスライスしたマッシュルームのソテーと焼きトマト

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ソーセージ&マッシュポテトが有名なお店の朝食
写真手前は「バブルアンドスクイーク」

 ホテルやカフェで食べてみた本場のイングリッシュブレックファスト。感じた事や発見したことなどをまとめてみました。

 パンは、日本のパン屋さんで見かける「イギリス食パン」と呼ばれている山形の食パンではなく、角食パンをトーストし、三角にカットした店が多かったです。 厚さは薄切りで、日本でいう「サンドイッチ用」より少し厚いくらい。「イングリッシュマフィン」が出てくることはありませんでした。 ベイクドビーンズは、名前に“ベイクド”とついていますが、大豆をトマトで煮たもの。焼かないそうです。 缶詰で売られていて、スーパーなどで安く、簡単に手に入るので、家庭でもカフェでも、缶詰を使うことが多いそうです。 ソーセージは、食感がとても柔らかく、日本で食べるような“パリッ”とした歯ごたえはありませんでした。 日本で販売されているソーセージと違い、つなぎにパン粉が入っているそうです。 蛇足ですが、製造過程で燻煙や加熱をしないので、スーパーなどでは生のソーセージが販売されています。 初めて食べたブラックプディングは、豚の血、豚の脂身、調味料、小麦粉、オートミール、ニンニクなどを混ぜて、牛腸に詰めて80度で煮たもの。 スライスして、フライパンで両面を焼きます。ベーコンは、日本でよく販売されている豚バラ肉のベーコンではなく、肩ロース肉のベーコンが多かったです。

 と、ここまで、イングリッシュブレックファストについて力説してきましたが、イギリスの人々が毎日このような朝食を食べているわけではなく、 普段は、シリアルや、ポリッジ(オートミール)、クランペット(イギリス版パンケーキ)など手軽に準備できるものを食べているそうです。

 今回は、そんなイギリスの朝ごはんからイギリス版お好み焼き「バブルアンドスクイーク」を、作ってみました。 イギリスでは、お肉の付け合わせとして添えられているマッシュポテトや茹で野菜の残り物を使って作る質素倹約、リメイク料理。 日本の家庭で付け合わせのマッシュポテトがたくさん残るということは、なかなかないと思いますので、 じゃがいもを茹でるところから始まるレシピになっています。いつものように、コラムの最後に作り方を載せましたので、ぜひお試しください。

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ホテルにてビュッフェ形式の朝ごはん。左上から時計回りにベイクドビーンズ、スクランブルエッグ、焼きトマト、マッシュルームのソテー、 目玉焼き、ハッシュブラウン、ソーセージ、ベーコン

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ロンドン市内のホテルでの朝食。パン、フルーツ、ヨーグルト、シリアル、ハム、チーズなど。いわゆるコンチネンタルブレックファスト。

参考ウェブサイト
日本ハム →: 一度は食べたい世界のソーセージ

参考文献:Carolyn Caldicott(2015)『GREAT BRITISH COOKING』(c)Frances Lincoln Limited

(食文化別館HP制作チーム ・ 新井純子/2017.07.19)


「バブルアンドスクイーク」の作り方

材料
じゃが芋 200g(約2個)
タマネギ 1/8個
キャベツ 25g
ニンジン 25g
ブロッコリー 25g
塩 少々
コショウ 少々
サラダ油 適量
バター 5g

作り方
1 鍋にじゃが芋とたっぷりの水を注ぎ火にかける。竹串がすっと通るくらいまでゆでる
2 1のじゃが芋の皮をむいてボールに入れ、マッシャーなどでつぶす
3 キャベツ、ニンジン、ブロッコリーは、さっと茹でて、粗みじん切りにする
4 タマネギは粗みじん切りにして、サラダ油で炒める
5 2のじゃが芋に、3のキャベツ、ニンジン、ブロッコリー、4のタマネギを入れ混ぜ、塩、コショウで味を整える
6 5を8等分にし丸め、厚さ5mmくらいになるように、うすく伸ばす
7 フライパンに油を熱し、6を入れ、両面こんがりと焼く
8 出来上がり直前にバターを入れ焼き目をつける

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残り物の野菜を使って作ります。イギリス版お好み焼き。

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ボリューム満点の朝ごはん。