「東日本大震災で被災した子ども達の笑顔がもっと地域に溢れるように」
ケーキ、クッキー、アイスにプリン、それから…もう生クリームが乗ってたらなんでもいいや。 どうして栄養分にならないのに、食べれば脂肪として蓄積するだけなのに、スイーツはこんなにも人を幸せにするのだろう。 理由を考えたところできっと無意味なのだろうなと思った時、友人が入学当初からやりたいと言っていたこの取り組みに参加することにしました。
当初、お菓子は栄養素やお腹を満たすには物足りないのではと思いましたが、お菓子を届けたら子ども達も喜ぶのではないかと気付いた時、
誰もがもらって嬉しいお菓子を届けよう、これを形にしていこうと思いました。
友人は、お菓子の中でも特にチョコレートが大好き。
チョコレートが好きだからチョコの会社に就職したい、チョコの工場見学に行こうと誘ってくる彼女。
そんな彼女の提案で、子どもたちに届けるお菓子は、チョコレートに決まりました。
今回、福島県南相馬市の小学校を選んだのは、友人の祖父母宅が南相馬市にあり、震災当時から話を聞いていたからです。
こうして始まりを迎えたのですが、子どもたち全員に届けるためにはたくさんのチョコレートを集めなければなりません。 そこで、友人のアルバイト先である、リンツ&シュプルングリージャパン株式会社に企画の趣旨を説明し協力を仰いだところ、 私たちの話を聞いて下さった方が、それだったらと1000個以上のチョコレートを寄付して下さいました。これには、二人共驚きを隠せませんでした。
リンツ&シュプルングリージャパン株式会社の寄付により、当初、私たちが考えていたよりもスムーズにチョコレートが集まったのですが、 私たちはこの活動を通して、もっと女子栄養大学の学生に震災の爪痕を知ってほしいという思いがありました。 そこで大学内でもチョコレートを集めることにしました。募金ではなく、チョコ募金です。 私たちは、食文化栄養学科の2年生に呼びかけ、その結果1300個以上のチョコレートが集まりました。
大学の夏休みを利用し、2015年9月10日の夕方、集まったチョコレートをスーツケースに詰めこみ、バスで福島県に向かいました。 台風の影響で予定より1時間遅れて午後10時に福島県南相馬市に到着しました。 そこから、休む暇もなく1人5個ずつのチョコバッグを401人分作りました。何度も数えてはチョコを入れ、就寝したのは午前4時をまわっていました。
早朝、鳴り響く電話に目が覚めました。それは、台風により小学校が休校になったことを知らせるものでした。 こうして、子ども達にチョコレートを渡しに行くのは週明けの月曜日に延期となりました。
月曜日、小学校を訪れると、まず校長室に案内され、被災当時のこととその後の取り組みを丁寧に説明していただきました。 震災当時、子どもたちは野外活動が制限されていて、2011年10月からは1日2時間以内、 2012年になると1日3時間以内と段階を経て拡大されていったそうです。(同年4月からは特に制限は設けられていません。) また、プールの授業では保護者の理解を十分に得るために学校側が時間をかけて取り組んでいたことを感じました。
校長先生から伺ったお話の中で、私の印象に強く残ったのは「子ども達が仮設校舎での授業を、非日常的に感じ楽しんでいた」という会話でした。 「非日常的に感じ楽しむ」。正に、子どもは遊びの天才だなと思ったのですが、 校長先生は、「それだけ親御さんの接し方が子ども達に安心を与え、それ以外変わらない日常を送らせているのだろう」とおっしゃっていました。 校長先生自身が震災に向き合い小学校を支えてきたからそう思うのだろうなと感じました。
そしていよいよ、子どもたちとの対面です。体育館には全校生徒が既に集められていました。
何も聞かされていないようで私たちを見てキョトンとしていました。
校長先生から好きなように話していいよと言われ、私たちが小学校へ来た経緯とチョコレートの説明、協力して下さった方たちのことなどを話しました。
全校児童の前で話なんてしたことがない私たちは、緊張しながらも笑顔で、私たちの想いを伝えました。
校長先生と考え、チョコレートは各学年の代表の子ども達に直接、手渡しすることにしました。
すると、子ども達からはお礼にメッセージと花束と校歌のプレゼントをいただきました。
“被災地の子ども達”と聞くと『可哀想』とか『大変だ』とか思ってしまいますが、子ども達は、そんなことは思って(感じて)おらず、 「今を楽しんでいるから過去のことはいい」のだそうです。とは言っても、私達は、校庭で遊ぶ時間を制限されたり、 プールに入れなかったり、閉校のためバスで遠く離れた学校に通わないといけない時があったり、 転校を繰り返している子がいる(いた)ことを忘れてはいけません。
お菓子プロジェクトを進める中で一番感じたことは、企画をしたのは私達二人ですが、
私達はあくまでも、作り上げていく中での一部であるということです。
お菓子を提供してくれる方達がいて、泊まる所や現地での移動手段を提供してくれる方達がいて、話を受け入れてくれる方達がいて、
このように多大なサポートを受けてやっと無事に企画を実現することができるのです。これは、運営側になってみて知ったことです。
今回のことが持続できるように次の作戦も少しずつ進めているので、私たちの企画に協力してくれる方達がもっと増えていき、
それに伴い、子ども達の笑顔も増えていくことを願っています。
この作戦を決行するにあたり、LINDT & SPRUNGLI JAPAN(リンツ&シュプルングリージャパン株式会社)様が 1000個以上のチョコレートを無償提供して下さいました。 このサポートのおかげで、栄大生から集めたものと合わせて、2300個以上のチョコレートを持っていくことができました。 この場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました。
(食文化栄養学科 2年 W.K./2016.03.01)
参考ウェブサイト
小学校のホームページでご紹介いただきました→:
『お菓子プロジェクトでチョコレートをいただきました』
南相馬市立原町第一小学校→:
南相馬市立原町第一小学校ホームページ
チョコレートを無償提供していただきました→:
LINDT & SPRUNGLI JAPAN