<第11回「現場で役立つ調理フォローアップ講座」開催報告〉
|
この冬何度目かの降雪の天気予報が出された平成27年2月18日(水)18時30分から、女子栄養大学駒込校舎において、第11回「現場で役立つ調理フォローアップ講座」が開催されました。幸い雪にはなりませんでしたが、冷たい北風の吹き荒れる中、18名ほどの受講者が集まりました。今回は「学校給食における食物アレルギーの実情と対応」のテーマで、元東京都公立学校栄養教諭の堀江紀子先生を講師にお招きしました。まさに今学校給食に携わっている方や養護教諭として学校にお勤めの方など、日々現場での食物アレルギー対応に直面されている受講者も多く、とても熱心に講義を受けていらっしゃいました。 |
|
堀江先生は女子栄養短期大学食物栄養学科をご卒業後、約2年間集団給食施設で栄養士として勤務され、その後東京都公立学校栄養職員として32年間勤務されました。その間に管理栄養士免許、栄養教諭免許を取得され、さらに栄養教諭として4年間勤務された経験をお持ちです。 |
はじめに先生がご紹介くださったのは、学校給食の食物アレルギーの実態でした。それは、 |
1. |
学校生活管理指導表の提出を義務付けにしたら、食物アレルギー対応者が増えた。・・・提出すればやってもらえると考える保護者により、対応件数が増えた。 |
2. |
管理指導表では、負荷試験や抗体検査をしていなくても「明らかな症状」を診断根拠として、医師が食物アレルギーと診断していることが多い。・・・自治体には血液検査を受けるよう強く求めたい。 |
3. |
食物アレルギーのアレルゲンの種類が増えている。・・・花粉症でバラ科の食物がアレルゲンとなっている等。 |
4. |
ひとりでアレルゲンを何種類も持っている児童、生徒が多くなっている。・・・卵、乳製品等の単一ではなく、合わせて大豆や甲殻類等がある。 |
|
1日も休むことのない食事作りに苦慮してこられた堀江先生のお話に、学校での対応の難しさを改めて考えさせられました。
次に、学校給食での食物アレルギーの対応について具体的な紹介がありました。それは、 |
1. |
除去食が基本。代替食はミスが起きやすい。食数、施設、調理員等条件を考えて実施することが望ましい。 |
2. |
1つの料理には1つのアレルギー対応が基本。(事故を防ぐため卵も豆腐もダメな場合は豆腐入りかき卵汁は作らない。) |
3. |
エピペンを持つ児童、生徒には弁当持参を勧める。(給食の提供を求めることが多いがリスクが高い) |
4. |
アナフィラキシーショック症状を引きおこす食品は献立から除外する。(栄養管理で使用しなくても特に問題ないもの。そば、ピーナッツ、甲殻類、キーウィ) |
|
実際に堀江先生が現場で行ってこられた食物アレルギー対応に関する事例の紹介は、身の引き締まる内容でした。
そして、先生が関わってこられた学校給食における「ひやりはっと集」から、具体的に事例をご紹介下さいました。「保護者や調理職員と情報を共有すること」、「調理職員の意識を高めさせること」、「アレルギー対応食は児童に手渡すまで二重三重に確認する体制を整えること」、「アレルギー用の特別な食器を準備して対応すること」、「加工食品については原材料検収表に張り付けておくこと」、「新一年生には初めての食材があったら家庭で食べてみるよう勧めること」、「アレルギー症状が出たら速やかに救急車を要請するよう学校管理職に進言すること」などの予防策について解説して下さいました。
さらに、献立作成、調理時に気をつける食材についてもご紹介下さいました。それは、 |
1. |
特定原材料(省令で定められたもの)7品目(えび、かに、卵、乳、小麦、そば、落花生) |
2. |
特定原材料に準ずるもの(通知で定められたもの) 可能な限り表示することが奨励された20品目 |
3. |
実際給食現場で除去している食材、除去した方がよいか悩んでいる食材、アレルギー用食材 |
|
ここまでの堀江先生のお話から、食物アレルギーについては学校栄養士、栄養教諭だけでなく多職種の方々と連携して、細心の注意をして対応する必要があることを実感しました。毎日続く「食」の取り組みは、常に広く深く考えていくことが重要であることだと改めて考えさせられました。
講義の後は調理実習に移りました。今夜のメニューは |
1. |
胚芽米ご飯 |
2. |
照り焼きハンバーグれんこん入り(卵・牛乳アレルギーの対応。つなぎにすりおろしたじゃがいもを使用) |
3. |
ブロッコリーのクリーム煮(小麦アレルギーの対応。米粉を使用。乳アレルギーではバター・生クリーム無しでもよい。低カロリーの対応にも応用できる。) |
4. |
小松菜ケーキ(B同様米粉使用) |
5. |
小松菜ケーキ(卵、牛乳アレルギー対応。豆腐、豆乳、オリーブ油を使用) |
|
でした。わいわいと調理実習をして、あっという間に試食タイムとなりました。 |
* |
ハンバーグは鶏挽肉と豚挽肉、豆腐を混ぜ合わせ、玉葱、人参、れんこんのみじん切りとじゃがいものすりおろしをつなぎに成型して焼き、かつおだしの和風だれでいただきました。 |
* |
クリーム煮はホワイトソースを作らずに野菜を炒めて短時間煮込むだけで出来上がりました。 |
* |
小松菜ケーキは米粉とベーキングパウダーで十分膨らみ、卵・牛乳を使用しなくてもおいしく出来上がりました。 |
|
|
|
試食中に堀江先生が各調理台を廻って受講者の質問に答え、作り方についても丁寧にアドバイスをしてくださりとても和やかな時間となりました。「1つの料理には1つのアレルギー対応」の実践調理がよく理解できる講座だったと感じました。
なお、この「現場で役立つ調理フォローアップ講座」は毎月第3水曜日に開講され、各回の講座の内容や申し込みはこのホームページでご案内しています。 |
〔取材 香友会広報部〕 |