平成26年度 現場で役立つ調理フォローアップ講座ルポ


 

〈第1回「現場で役立つ調理フォローアップ講座」開催報告〉

 

 平成26年4月16日(水)18時30分より、女子栄養大学駒込校舎において「現場で役立つ調理フォローアップ講座」の第1回目が開催されました。
 本講座は今年度よりスタートした香友会主催の新講座で、様々な調理現場で専門職として活躍する卒業生の調理技術や献立作成能力のレベルアップ、また、円滑に業務を進めるうえで必要なコミュニケーション能力を磨くことを目的として開講されました。

 受講者の皆さんは終業してすぐに駆けつけてくださったようで、定刻の18時30分に熱い視線を集めてスタート。まず、第1回目の開講にあたって吉田企世子香友会会長から挨拶がありました。
  第1回目の講師は、本学栄養学部栄養学科卒業で(株)バイワネルの代表取締役である森野眞由美先生です。テーマは「作業効率を考えた献立作成と応用」、副題が「20分で作るコツと手順」で、さっそく森野先生によるデモンストレーションが始まりました。

調理実習が主目的の講座ですが、まず講師によるデモンストレーションにより、どのような調理学が学べるのか、大事な導入の時間です。講師自らがこれまで様々な現場で直面した困難にどう取り組んできたかについて、実例を交えての講義も組み込まれ、今まさに現場で仕事をして課題に直面している栄養士や調理師にとって、神の声とも言える貴重な提言がありました。 たとえば、

1.
提案したい料理には「魚ぎらいな子供には」等インパクトのあるサブタイトルをつける。
2.
「葱のピリ辛が食欲を増す。その成分は硫化アリルですよね。」等、栄養士は専門家であるとの印象を示す。
3.
がんもどきをサラダに使うことで料理全体にコクが出て薄味でも旨味を感じられる等、難しいと思わせず、いつもの料理に何か少しプラスする方法などを提案する。
4.
デモンストレーションは20分程度にまとめる。その際カロリーの対比等を写真で見せるなど、自分なりの工夫をする。

など、すぐに役立つ実践的な内容でした。
 デモンストレーションに続き、受講者が4〜5人の班に分かれて調理実習をおこない試食しました。

《実習・試食メニュー》
*かつおの照り焼き みそ風味
*がんもどきと野菜の中華風あえもの
*ひじきとねぎのわさびマヨネーズあえ
*キャベツとなめこのスープ
*胚芽米ご飯
*オレンジ

実習と試食の間も、森野先生や香友会のスタッフの方々が受講者からの質問にていねいに答えてくださり、受講者からは、改めて調理のコツが理解できた、楽しく参加できてよかった等の声が聞かれました。
 この講座は毎月第三水曜日に開講されます。第2回目以降も楽しみな講座となりました。

〔取材 香友会広報部〕

 

<第2回「現場で役立つ調理フォローアップ講座」開催報告>

 

 平成26年5月21日(水)18時30分より、第2回「現場で役立つ調理フォローアップ講座」が女子栄養大学駒込校舎において開催されました。
 今回は「春野菜を使って調理の基礎力・応用力をつける」をテーマに、女子栄養大学生涯学習講師で管理栄養士の澤坂明美さんを講師に、調理実習を中心に行われました。当日は日中どしゃぶりの悪天候でしたが、開始時刻頃には雨も上がり、勤務を終えて参加された方も含め18名の受講者が集まりました。

調理実習のメニューは、
 ・回鍋肉(時短バージョン)
 ・筍とふきの煮物
 ・塩もみサラダ(キャベツ・きゅうり・新玉ねぎ)
 ・味噌汁(新じゃがいも・新玉ねぎ・塩蔵わかめ)
 ・ごはん(胚芽米)

の5品で、家庭でも季節感を楽しめる献立について、大量調理する場合のポイント等を中心に説明がありました。はじめに、集団給食で使いやすい春の季節野菜として、春キャベツ、新玉ねぎ、ふき、筍、新じゃが、グリンピース、アスパラ、うどが取り上げられ、その出回り期間と調理手順が記載された資料を参考に、調理デモンストレーションがありました。受講者の皆さんは見逃すまいと熱心に集中していました。
デモンストレーションでは、

回鍋肉などの「炒める」手法の中国料理を大量調理する場合は、材料を蒸すか塩と油を加えた熱湯で茹でてから調味料で和えれば時短にもなり、歯ごたえも残る。
 (今回は豚バラ塊肉をやや薄めに切り、塩少々を入れた熱湯で茹で、取り出したあとすぐにキャベツとピーマンを茹でた。肉の油を利用することで経済的である。)

筍は厚めに切った方が歯触りを楽しめるが、大量調理では薄めに切った方が均一に味付けができて食べやすい。
サラダの野菜はせん切りにして塩もみし、水洗いして盛り付けるとかさを減らすことができる。

玉ねぎは繊維にそって切ると触感が残るが、高齢者向けには繊維に直角に切った方が煮くずれやすく、やわらかく仕上がる。

煮干しやかつおだしの魚臭さは、吸い口(今回は煮干しだしの味噌汁に粉山椒を入れた)をあしらうとよい。

など、料理ごとに調理現場ですぐに役立つポイントが紹介されました。
 今回はあらかじめだし汁が取ってあり、筍やふきの下処理も済んでいたので、調理実習がとてもスムーズに進み、受講者の皆さんはゆっくりと試食しながら情報交換ができました。
受講者からは、

・ぜひ献立作成の参考にしたい。
・応用できそうなことがたくさん学べた。
・調理学の基礎を再確認できた。
・受講者の間でそれぞれの現場の状況がわかって楽しい。

などの声が聞かれ、さまざまな業務に携わっておられる受講者の皆さんは大いに参考にされている様子でした。
 なお、この講座は毎月第3水曜日に開講され、第4回目以降も受講者を募集しています。

〔取材 香友会広報部〕

 

〈第3回「現場で役立つ調理フォローアップ講座」開催報告〉

 

 平成26年6月18日(水)18時30分より、女子栄養大学駒込校舎において「現場で役立つ調理フォローアップ講座」の第3回目が開催されました。当日は、前回に引き続き日中激しい雨が降る悪天候でしたが、仕事を終えて駆け付けた14名の受講者がありました。

 今回は、女子栄養大学教授(衛生学研究室)で獣医学博士の上田成子先生をお招きし、「調理と衛生管理」について、基礎的な知識から最新の情報まで、わかりやすくコンパクトに講義していただきました。
 まず、講義の導入として、先般話題となった生食肉(ユッケ)と生レバーの安全性に関して取り上げられ、近年、なぜ食中毒が多発しているのかを解説してくださいました。

まとめると、

講師の上田成子先生
1、 ヒトと病原性食中毒菌とのかかわり方に変化がおきているために食中毒がおきている。
2、 広く腸管感染症を食中毒と称しているため原因菌の種類が多様化している。
3、 生活環境の変化(食生活の変化、食品工業・販売形態の拡大等)による影響も大きいと考えられる。
4、 家畜等動物に由来して発生している場合も増えている。
5、 海外旅行者、海外移住民の増加も大いに影響している。
6、 食品衛生法からとらえる食中毒と感染症法からとらえる食中毒のどちらも食中毒と報道されるために増加した感がある。
7、 食中毒による死者の報告も増えているが、発生原因は不明な場合も多い。
そして、食中毒予防の対策についてのお話をまとめると、
1、 調理による加熱で食中毒菌(微生物)は死滅させることができる。
2、 すべての食中毒は手から始まる。=手洗いは重要である。 
3、 フキン、まな板、スポンジ等調理器具の熱湯消毒、そして乾燥が最も大切である。=水分があれば菌は生き残れる。
4、 家庭でできる食中毒予防では
 *食品購入時・・・ペット入店OKの店舗はもっての外。生鮮品は最後に購入する。
 *素早く持ち帰り、早めに加熱する。
 *食中毒菌に負けない強いからだ=健康なからだを作る。

そのためには、
 ・バランスのとれた食事をする  
 ・ストレスを作らない
 ・運動をする
 ・抵抗力をつける
 ・夜更かしをしない  など
  社会生活で調理現場に関与し衛生管理に関心の高い受講者にとって、日常的に役立つ貴重な内容の講義でした。講義の後は、上田先生と受講者全員で、酢と梅を使った料理(ちらし寿司、やわらか豆腐の梅ねぎソース、すまし汁)をいただきながらなごやかに会食しました。時節にあった料理は受講者の参考になったようで、さまざまな質問も飛び出し、まるで学生時代にもどったかのような雰囲気の講座でした。 
 なお、この講座は毎月第3水曜日に開講され、各回の講座の内容はこのホームページでご案内しています。
〔取材 香友会広報部〕

 

《「現場で役立つ調理フォローアップ講座」〜特別講座〜開催報告》

 

 今年度より始まった「現場で役立つ調理フォローアップ講座」。その特別講座が、7月12日(土)と13日(日)に「熊谷喜八シェフによる〜スチームコンベクションおよび最新の調理機器を活用したレシピ〜」と題して開催されました。場所は東京都内南麻布にある「株式会社フジマック麻布クッキングラボラトリー」。当日(13日取材)は、梅雨明け前の蒸し暑い日でしたが、21名の受講者がありました。この特別講座は、料理界の重鎮である熊谷シェフによるデモンストレーションに試食つきの内容で、皆さん意気揚々とお集まりのように見受けられました。さらに、フジマックのスチームコンベクション(コンビオーブン)と最新機器(バリオクッキングセンター)を使用するとあって、興味はさらに深まりました。
  熊谷シェフが用意されたメニューは、以下の通りです。

*叩きエビの春巻き
*帆立貝と旬野菜のタイ風サラダスープ
*ズワイ蟹のフラン クリームソース
*オマール海老のパイ包み焼き
*バターライス
*若鶏のプロヴァンス風田舎煮

このように、揚げる、煮る、蒸す、焼く、炊くと盛りだくさんであるにもかかわらず、20人分の料理が、2時間強で完成してしまいました。

写真は熊谷喜八シェフと調理デモンストレーションの様子

 熊谷シェフの腕前はもちろんですが、最新の厨房機器の機能には目をみはるものがありました。スチームコンベクションは、加熱調理の80%をカバーでき、しかも熱の伝わりが均一なので量にかかわらず加熱にムラがないとのこと。確かにオマール海老のパイ包み焼きはどの面も焼き色均一できれいな焼き上がりでした。バリオクッキングセンターは、揚げる、煮る、焼く、炊く、茹でる、さらに圧力調理もできる機器です。叩きエビの春巻きを揚げるのは、温度と時間をセットしておけば自動で揚げ油から引きあげていました。揚げムラもなく、フライヤーにつきっきりでなくても大丈夫。また、洗浄の際は、機器内に直接注水できて洗浄ノズルもついているので、重い鍋を持ってレンジに行ったり洗い場に行ったりすることがなくなります。両機器ともすばらしい性能に驚くばかりでした。これらの機器を使いこなす熊谷シェフは、電化厨房を取り入れて40年になるそうです。はじめはとまどうこともあったとのことですが、今では利点を最大に活かして使われているそうです。
 熊谷シェフのデモンストレーションは、楽しいお話を交えたクッキングショーを見学しているようでした。言うまでもなく手つきがあざやかで、特に素晴らしいと思ったのは塩の振り方がきれいなこと。サラッと魔法の様に均一に振られるのです。また、料理の一区切りのたびにテーブルの上をきれいに拭かれて、見ていて気持ちのよいものでした。
 熊谷シェフと最新調理機器のコラボレーション。これはもう素晴らしいお料理のできあがりは約束されたもので、どのメニューも、美味しいのはもちろん、ほのぼのとした優しい料理だなと感じました。熊谷シェフの穏やかで優しいお人柄がお料理に表れているようでした。

〔取材 香友会広報部〕

 

 

〈第4回「現場で役立つ調理フォローアップ講座」開催報告〉

 

 平成26年7月16日(水)18時30分より、第4回「現場で役立つ調理フォローアップ講座」が女子栄養大学駒込校舎において開催されました。今回は「失敗しない大量調理の秘訣」をテーマに、講師として学校給食研究改善協会の調理講師 大留光子先生をお招きしました。当日は、20代から30代の学校給食栄養士実務者を中心に24名の受講者がありました。
大留先生は東京都の学校栄養職員として31年間、さらに家庭科教員、栄養教諭免許取得後栄養教諭としても4年間勤務ののち、東京都給食功労者として表彰を受けられました。現在は、協議会の調理講師として、また学校給食サイト「おkayu」のデイレクターとしてもご活躍しておられます。
(写真は大留光子先生の講義の様子)
講義では、長年学校給食の現場で培ってこられたご経験を踏まえて、実際の大量調理の現場で起こりうる事例をわかりやすくご紹介くださり、受講生の皆さんは大変熱心に傾聴しておられました。

 講義は、まず学校給食の調理現場でのホワイトソース作りの映像視聴から始まりました。既製品を使うのではなく、できるだけ手作りを実践してこられた大留先生ならではの失敗しないポイントを、実際の作業手順を見ながら解説していただき、とてもわかりやすいと感じました。
 そして、児童・生徒たちが「おいしい」と喜んで食べてくれる料理を大量に作る現場でのコツについて、大留先生の熱のこもった講義は続きました。先生曰く、

大量調理のコツは「現場」から
 →調理学から知識を!現場から経験を!調理員さんとのコミユ二ケーションが大切!

ダンボの耳と馬の耳を持とう
→聞こえてくる声、聴かなくてはいけない声、大切な声に耳を傾けよう!

言い訳「3D」にさ・よ・う・な・ら
→前向きに改善策を考えよう!

現場○○○回
→調理時間のデーターを蓄積、栄養士は現場でわかることがある。
  現場でたくさんのコツを見つけよう!

まさに、毎日現場で直面しているさまざまな問題の糸口をつかもうと、受講者の皆さんの思いを強く感じることができました。
 そして、大留先生が薦められる人気メニューの調理実習に移りました。

メニューは
 *みどりのピラフ・ビーンズソース(冷凍白花豆と白いんげん豆ペーストを使用)
 
*青大豆のさわやかソース
 (冷凍青大豆ペースト、卵アレルギー対策のとうふマヨネーズを使用)

 *もずくスープ
 (ソフトササミフレーク、減圧殺菌乾燥しいたけスライス、冷凍もずく、 大豆フレークを使用)
 *シャキシャキ野菜の梅昆布和え(冷凍わかめ、スクール糸かまぼこを使用)

の4品でした。材料は学校給食用優良食品(各メーカーと改善協会の共同開発)を利用したメニューでしたが、児童・生徒の栄養量確保のために使いやすい商品が各種開発されていること、それらの商品を手づくりにこだわらずに取り入れることで、さらに栄養価が高くおいしい給食を提供しようと日々研究されていることなど、より深い情報に触れることができました。

 試食時には、一部使用した学校給食用優良食品の紹介や、災害時給食用非常食「救食カレー」の提供もありました。これは全国の栄養教諭・学校給食職員が開発した、ライフラインが途絶えた中で救援物資が届くまでの「いのちをつなぐ」非常食であるとの説明があり、とても参考になる情報で、昨今の社会情勢からも重要性を感じることができました。
 なお、この講座は毎月第3水曜日に開講され、各回の講座の内容はこのホームページでご案内しています。

〔取材 香友会広報部〕

 

<第5回「現場で役立つ調理フォローアップ講座」開催報告>

 

 夏真っ盛りの平成26年8月20日(水)18時30分より、第5回「現場で役立つ調理フォローアップ講座」が女子栄養大学駒込校舎で開催されました。厳しい暑さが続き、日が暮れても蒸し暑さの残る中、勤務を終えたばかりの方を含め、約20名の皆さんが参加されました。

 今回は、地域食支援グループ「ハッピーリーブス」で管理栄養士の資格を生かし、副代表として活躍されている安田淑子さんを講師にお招きし、「在宅で簡単にできるおいしい嚥下調整食」〜摂食・嚥下障害があっても安心して楽しく食べられる方法〜について講義していただきました。受講生は、施設や病院で摂食・嚥下障害を患っていらっしゃる方々に給食を提供する仕事に従事されている方のほか、在宅で家族の介護をされていて食事の提供に困っているという方もいらっしゃいました。
(写真は安田淑子先生の講義の様子)

 
  在宅介護が増える中、居宅療養管理指導が介護保険サービスの1つとなりました。これは管理栄養士が、医師、歯科医師、看護師、薬剤師、歯科衛生士などの他職種と共同で栄養ケアマネジメントを行い、介護認定を受けている摂食・嚥下が困難な方々のご自宅を訪問して、食事についてのアドバイスをするというサービスです。病院でのNSTにおける管理栄養士の役割とともに、今後ますます必要とされる職域ではないかと受講して強く感じました。
 さて、安田先生のお話は、今に至る自己紹介から始まり、在宅栄養士に求められる役割について先生が担当された実践的な事例を挙げてご紹介してくださいました。そして、在宅栄養士に必要なキーワードとして

なぜ食べられないのか、どうしたら食べられるようになるのかを考えて行動すること。
そのためには、口腔ケアと食姿勢を理解し、多職種と協働すること。

をあげられ、先生が食支援グループ「ハッピーリーブス」を立ち上げられた経緯や日々の活動をもとにした事例などについて大変わかりやすくお話いただきました。
 さらに参考になったのが調理実習です。実習のポイントは

 1. なぜ食べられないのかを考えよう。
 2. 効率の良い食事とは → 少量高カロリーで飲み込みやすいこと。

の2点で、先生がていねいに解説、デモンストレーションしてくださりながら
 ・濃厚流動葛餅
 ・茄子の揚げ浸し
 ・軟らかチキンの野菜巻き蒸し
 ・オクラと豆腐の味噌汁
を調理、試食しました。
 また、特筆する点として

在宅の高齢者はガス台が危険なため使用せず、調理器具は電子レンジのみのことも多いので、電子レンジ調理の知識も必要であること。

嚥下に適するトロミは対象者によって異なり、メーカーによってもかなり扱い方が違うので、適宜対応できるようにしておくこと。

食べられない(小食)対象者の場合、皿数が多いことはプレッシャーになるので、一皿にまとめ  るなどの工夫も必要。
オクラ等食材そのものがもつトロミ(粘り)を利用する知識も大切。

などを示されました。
 今回の講座は、日々真剣に食べることに困っていらっしゃる方々と向き合っておられる安田先生から、まさに現場で役立つさまざまな事例や納得のいくお話が多く伺え、充実したひとときでした。
  なお、この「現場で役立つ調理フォローアップ講座」は毎月第3水曜日に開講され、各回の講座の内容や申し込みはこのホームページでご案内しています。

〔取材 香友会広報部〕

 

<第6回「現場で役立つ調理フォローアップ講座」開催報告>

 

 少しずつ秋めいて日暮れが早くなり夕闇の迫る中、平成26年9月17日(水)18時30分より、女子栄養大学駒込校舎において第6回「現場で役立つ調理フォローアップ講座」が開催されました。本年度4月より毎月1回ずつ開催されているこの講座も6回目となり、続けて受講されている方も含めて18名が参加され、和やかな雰囲気で始まりました。

  今回は、調理師免許・管理栄養士免許をお持ちの同窓生であり、「Bistroあおい食堂」のオーナーシェフでいらっしゃる加賀田京子さんを講師にお招きし、「子どもも大人もおいしく食べられるフレンチ野菜料理」を教えていただきました。

 

写真は講師の加賀田京子シェフ
 加賀田シェフは、テレビや雑誌等で料理対決から数々の家庭料理の紹介まで幅広く活躍され、また、一児の母として子供から大人まで安心しておいしく食べられる料理レシピを考案し、女性料理人として日々厨房に立ち、本格的なフランス料理をアットホームに提供していらっしゃいます。経歴をご紹介すると、女子栄養大学栄養学部栄養学科(実践栄養学専攻)をご卒業後、(株)ロイヤルパークホテル調理部に入社され、女性のいないホテルの厨房で男性と同じ力仕事もされながら調理の研鑽を積まれました。そして、テレビ番組「料理の鉄人」にご出演、陳健一氏とのホタテ料理対決で勝利をおさめられ、一躍時の人となりました。その後も御殿場Bistro「アン・モンレープ」などのシェフに就任してフランス料理の技を高め、出産を機に「Bistroあおい食堂」をオープンされました。昨年(平成25年6月23日)の香友会ホームカミングデーで行われた「学園創立80周年記念シンポジウム」に起業した同窓生のお立場からシンポジストとして参加され、子育てしながらのレストラン経営の難しさややりがい等について、自らのご経験を踏まえてご講演下さいました。

 今回は、6歳の愛娘「あおいちゃん」も加賀田シェフの助手として調理実習に参加され、受講生にとっては食育の実践に関しても参考となる講座になりました。また、加賀田シェフが開業されたお店のコンセプトは、「子供にも野菜を食べてほしい、そのためには安心・安全な料理を提供すること」。シェフからの「私たちは何を食べるのかを選ぶ時代になっているのでは」とのご発言が印象的でした。

 さて、いよいよ本日の調理実習ですが、シェフが教えて下さったメニューは
 ・キノコのマリネ
 ・オムレツ(スパニッシュ風)
 ・里芋のブラマンジェ
 ・ロールキャベツ
の秋を感じられる野菜を使ったフランス料理風の4品でした。

 実習では、加賀田シェフが野菜料理のおいしさを提供するために実践されていることとして、

野菜料理の時に「こしょう」は使わない。野菜の味は強くて繊細。こしょうはパンチがあって野菜の味より勝ってしまう。

野菜は水だけで煮て、野菜のうまみをしっかり引き出す。ブイヨン等を入れると動物の味が入り込んでしまう。

野菜のうまみを引き出すために、足していくのではなく「引いていく」ことを覚えた。
ことをご紹介下さいました。日々おいしい野菜料理の提供に努力されているシェフの言葉はとても参考になりました。
 また、それぞれの料理については
キノコのマリネ
きのこは加熱すると一回り小さくなるので、大きめの食べやすい大きさにそろえて切る。そして一度に全部いっしょに加熱し、しんなりしてから塩を加える。早く塩を入れると水っぽくなる。
オムレツ(スパニッシュ風)
丸いオムレツは土手を作りながら焼くとひっくり返しやすい。
里芋のブラマンジェ
あおいちゃんの保育園でのメニューのアレンジ。和のスイーツとしてお店で提供している。里芋は皮付きのまま蒸した方が味や香りが残りおいしさを感じられる。
ロールキャベツ
フードプロセッサーを使って一気に混ぜ合わせることで調理時間を短縮できる。またレンコンをつなぎに使うことでまとまりやすくなる。和風だしのスープで煮込む時アクを丁寧にとることで透き通ったスープになり、さっぱりとした味わいになる。
といった、大変わかりやすい調理のポイントの紹介がありました。

 受講者からの質問では、
1. 味付けに使う塩にこだわりは?
お店ではフランス産のものを使っている。粒子の粗さで使い分けている。精製塩は使わない。ミネラルの多いものと味の強い粗塩も料理によって使い分けている。
2. オムレツを焼く時にバターとサラダ油の両方使うのは?サラダ油だけでは風味が足りない。バターは水分が含まれており、仕上がりが水っぽくなりすぎる。そこで合わせて使っている。
3. 里芋のブラマンジェ、ほかの種類の芋では?
4. ロールキャベツを煮込む時、落としぶたはいらない?してもよいが、かぶる程度のスープがあれば特にしなくても鍋のふたを少しずらしておけば大丈夫。

 いずれも加賀田シェフがあおいちゃんと一緒に丁寧に指導して下さり、試食時から後片付けまで、終始笑顔のたえない講座となりました。
  なお、この「現場で役立つ調理フォローアップ講座」は毎月第3水曜日に開講され、各回の講座の内容や申し込みはこのホームページでご案内しています。

〔取材 香友会広報部〕

 

<第7回「現場で役立つ調理フォローアップ講座」開催報告>

 

 朝夕めっきり寒さを感じるようになった平成26年10月15日(水)18時30分より、女子栄養大学駒込校舎において第7回「現場で役立つ調理フォローアップ講座」が開催されました。今回は「調理と衛生管理2 ノロウイルスとその対策」というテーマで、6月18日に開催された第3回の講座に引き続き、女子栄養大学大学院及び女子栄養大学教授で獣医学博士、衛生学研究室の上田成子先生を講師にお招きし、冬場に多く発生しているノロウイルスを中心とした食中毒について、発生のメカニズムや予防対策等をご講義いただきました。今回は大量調理の現場で活躍されている同窓生だけでなく、現役の学生の参加もあり、先輩後輩の垣根を越えた交流がありました。
 まず先生から説明があったのは、食品による食障害の原因分類についてでした。微生物が関与するものなのか、化学物質が関与するのかによって、さまざまな事例が報告されていることを紹介してくださいました。その中で、細菌性食中毒の患者数は、統計的には集団給食での衛生管理状態が良くなっていると考えられる数値になっていることが示されました。手でおにぎりを握らなくなって黄色ブドウ球菌による食中毒が減ったことや、低温流通が主流となり菌の増殖スピードが遅くなり、腸炎ビブリオ食中毒の報告が減ってきたなど、わかりやすい解説がありました。

 しかし、ノロウイルスによる食中毒については年々増加の傾向にあり、その事例として 1.仕出し弁当によるノロウイルス食中毒 2.飲料水によるノロウイルス食中毒 3.デザートカップを介してノロウイルスに感染した事例が具体的に紹介されました。その発生メカニズムの中に予防対策等へのヒントが含まれており、参加者はメモをとりながら熱心に聞き入っていました。
そして、ノロウイルス食中毒の予防対策について上田先生がポイントをおさえてご説明くださいました。それは、以下のようにまとめられます。

食中毒に負けない強いからだを作る=ヒトの健康を保つ
食品中ではノロウイルスは増殖しない=食中毒微生物を付けない、増やさない、やっつける
食中毒を起こすも起こさないも「ヒト」による=手洗いの徹底

 あたりまえのことのようで、改めて食(調理)に携わるものとして季節を問わず常時関心を持たなければならないことだと気付かかされました。
  また参加者の方から、調理実習を実施する際の心配事の質問がありました。食中毒が心配で講習会を中止したこともあるとの質問に対しては、健康に自信のある方だけ参加してもらう、完全加熱調理だけのメニューを選ぶ等のアドバイスがあり、質問者は大きくうなずき大変参考になった様子でした。 講義の後は、スタッフの手づくりの料理をいただきながら和やかに会食となりました。 

講義の後は、スタッフの手づくりの料理をいただきながら和やかに会食となりました。
メニューは
 ・ 秋鮭の親子寿司
 ・ きのこ汁
 ・ さつまいもと南瓜のほっこりサラダ

の3品でした。鮭は生ではなく甘塩を使う、芋・かぼちゃは冷めてから和えるなど食中毒予防を取り入れた調理方法を紹介していただき、講義だけではなく、実践につながる和やかなひと時となりました。
なお、この「現場で役立つ調理フォローアップ講座」は毎月第3水曜日に開講され、各回の講座の内容や申し込みはこのホームページでご案内しています。

〔取材 香友会広報部〕

 

<第8回「現場で役立つ調理フォローアップ講座」開催報告>

 

 本格的な冬の到来を思わせる寒さの中、平成26年11月19日(水)18時30分より女子栄養大学駒込校舎において第8回「現場で役立つ調理フォローアップ講座」が開催されました。冷たい風が吹く夕刻でしたが、病院栄養士として勤務されている方など15名の受講者がありました。
 今回は、社会福祉法人聖母会「聖母病院」栄養室に勤務されている和田有代先生を講師に迎え、「良くも悪くも十人十色〜低カロリー・低塩の献立展開の仕方(病院給食の場合)〜」のテーマで、講演と調理実習をしていただきました。

 先生は女子栄養短期大学食物栄養学科をご卒業後、「埼玉医科大学総合医療センター」栄養部に入職され、以来約23年間、病院給食に携わっていらっしゃいます。日本糖尿病学会や日本病態栄養学会、日本肥満症治療学会にも所属され、埼玉県糖尿病協会理事もされています。今回の講座では、病院栄養士として実践を積まれてこられた中で培われたノウハウを、短時間内にわかりやすくご紹介いただきました。
講師の和田有代先生


 まず前半の講義では保険診療における病院給食に関して理解するために、食事療養費の金額や栄養補給量の設定、適時・適温、特別食加算などについて解説がありました。特に食事箋も診療録であり、食事は治療の一環としての位置づけであること、加算の対象となる特別食では、保険診療上のルールや各施設の条件等も留意したうえでの献立作成が重要であることをお話し下さいました。

  そして、いよいよ実践的な基本献立からのエネルギーや塩分の調整方法についてのご紹介がありました。例として、実際に先生が実務において委託業者の栄養士とのやりとりでお困りになったことや驚かれたことなどを、食事のイラストを使って説明して下さいました。栄養士業務は、机上で単にエネルギー量や塩分の数字を変えるだけの作業で終わらせてはいけず。患者さんの立場=食べる側に立って配慮してこそ食べてもらえる治療食の献立ができることを改めて実感させられました。低カロリー食へ展開するには、脂質の少ない部位の肉や魚介を選んだり、低カロリーで繊維の多い野菜やきのこを多用することで低カロリーでもボリュームを維持できること、また揚げるのではなく焼く、茹でるといった調理方法に変えることでエネルギーダウンが可能であることなど、また、塩分量調整では、調味料を減量するだけでなく、風味、香辛料、だしなどを活用しおいしく感じる工夫の配慮が大切であることなど、すぐにでも業務に展開できそうなとても実践的な内容の数々でした。
 
  さらに、今回はこれらの講義内容に添った調理デモンストレーションがあり、その後実習をおこまいました。そのメニューとポイントは、次の通りです。

・豆カレー       
 脂質の多いひき肉の使用料を減量、大豆でたんぱく質を確保し低エネルギーに。
・きのこのマリネ    
 低エネルギー食材のエリンギを使用し、咀嚼を促すねらいもあり。
・ヨーグルトサラダ
 ヨーグルトの酸味を調味料代わりに使用し低エネルギー及び減塩に。

その他、減塩レシピとして次の2品をデモンストレーションしてくださり、試食しました。
・香草パン粉焼き    
 鮭の皮の焦げ目やパン粉の香ばしさ、香草類の香りで減塩に。
・ミネストローネ    
 トマトを調味料代わりにし、少量のベーコンと粉チーズが低エネルギーでも
 コクをアップ。

実習メニュー
( 写真手前から時計回りに)

・豆カレー
・ヨーグルトサラダ
・きのこのマリネ

 短時間の中で講義内容と調理実習がコンパクトに結びつき、試食タイムでは、受講生の間で日々の献立作成を反省する声や、食材の選び方によって簡単でおいしい献立を作成できることがよくわかったといった声が聞かれ、それぞれの日常業務への参考にしたい様子がうかがえました。
  なお、この「現場で役立つ調理フォローアップ講座」は毎月第3水曜日に開講され、各回の講座の内容や申し込みはこのホームページでご案内しています。

〔取材 香友会広報部〕

 

<第9回「現場で役立つ調理フォローアップ講座」開催報告>

 

 師走のあわただしい雰囲気の中、平成26年12月17日(水)18時30分より、女子栄養大学駒込校舎において第9回「現場で役立つ調理フォローアップ講座」が開催されました。今回は「子どもがいきいきする食育活動〜現場でかかわる栄養士のあり方〜」というテーマで、香川明夫先生にご講義いただきました。香川先生は、玉川大学文学部教育学科ご卒業後、上越教育大学大学院学校教育研究科を修了されたのち、埼玉県の小学校教員として約25年勤務され、現在、女子栄養大学短期大学部こども食育研究室の教授としてご活躍です。先生が「食育」をテーマにご講演されるとあって、女子栄養大学の卒業生ばかりでなく多方面から受講者が参加しました。
 まず先生がお話しされたのは、日本人の「食」に関するデータについてでした。2014年の人口統計から試算すると、1日で3.8億食が食べられていることになる。また日本ではいろいろな地域独自の食べ物を食することが可能で、衛生面はたいへん優秀に行き届き、水よりも安価な牛乳が入手できるなどといった日本での「食べる行動」についてのお話は、「食」に関する仕事をしている多くの受講者にとって新鮮な切り口でした。

さらに、先生が長年実感してこられた「食育は一人ではできない」「食育は新しいことではない」という考察について具体的に解説してくださいました。幼稚園・保育園でも学校でもみんなが「食べる」、だれでも「食べる」。人は生きる上でずっと「食べてきた」。人の身体も心も食べたものからできている。だから「食」を大切にする必要がある。「食育」は食べるものを見定め確保するために必要だった。だから食育基本法では「食育」は国民運動であるとうたわれており、厚労省や文科省ではなく内閣府が管轄して行われている。…といったお話には「食育」の重要性を再認識いたしました。子供たちがいきいきと活動するために、栄養士は保育士や幼稚園教諭と仲良くなってみんなで一緒に食育を進めようというご提案は、おおいに納得させられました。
次に、食育の実際についてタイプを3つに分けてご紹介くださいました。それは「栄養士や保育士が読み聞かせをしたり紙芝居や人形劇をみたりする座学型」、「野菜などを栽培したり調理する、ごっこ遊びをするなど直接または間接的に体験する体験型」、「これらを合わせておこなう融合型」といった内容でした。ここでは、先生が集めてこられたくさんの食に関する絵本の中から受講者全員が1冊ずつ気に入った本を選び、一人ずつ実際に読み聞かせを行うという時間もありました。先生ご自身もおにぎりのかぶり物をして読み聞かせをご披露して下さるなど、講義会場はとても楽しく、学生時代のグループ発表のような雰囲気に包まれました。
ここで先生が強調されたのは、食育でどの型を使うにしても考えておかなければならないのは「安全性」であるとのことでした。そしてさらに次のような事例が提案されました。

朝食を「食べ続ける習慣」を作ろう。早寝をしているか、体を動かしているか、朝ウンチがでているかなど、保護者とともに確認したい。

一緒に料理を作る喜びや楽しさを感じよう。卵を割ったり包丁を正しく持つなど、子供が料理に関心を持ち始めるピークである5歳ごろから行うとよい。

一緒に食べる喜びや楽しさを感じよう。味の違いや温かいまたは冷たい食べ物を説明させてみる。

園児でもできる朝食作りの原則をぬり絵などを使ってイメージづくりをしたり、保育士さんや農家の方と協働して野菜作りをするなど、具体的でとてもわかりやすい内容でした。
 講義の最後で先生は食育を保育園から家庭に広げ、食事を整える力をつけて正しい生活習慣と健康を維持増進してほしい。そのために全職員一致協力して、楽しく、細く長く、あきらめず「食」について正しい知識を持ち、情報の氾濫に立ち向かい、また、子供を大切に、子供と共に、保護者や地域と共に食育に取り組んでいただきたいと熱くお話してくださいました。 

講義後には、先生とご一緒に全員で「大人のお子様ランチ」の夕食をいただきました。
メニューは ・タイ風チキン ・ミニトマトのマリネ ・スクランブルエッグ ・ケチャップライス ・きゅうりとりんごのサラダの5品で、ワンプレートにかわいらしく盛りつけられており、受講者は童心に返ったようにわいわいとにぎやかにいただき、とても楽しくなごやかな時間となりました。

 なお、この「現場で役立つ調理フォローアップ講座」は毎月第3水曜日に開講され、各回の講座の内容や申し込みはこのホームページでご案内しています。
〔取材 香友会広報部〕

 

<第10回「現場で役立つ調理フォローアップ講座」開催報告>

 

 厳しい冷え込みの中、平成27年1月21日(水)18時30分から、女子栄養大学駒込校舎において、第10回「現場で役立つ調理フォローアップ講座」が開催されました。この講座は、昨年4月から調理現場で活躍する専門職の方々の調理技術や献立作成能力のレベルアップや、円滑に業務を進めるうえで必要なコミュニケーション能力を磨くための学びの場として開講されて以来10回目となりましたが、夜間の開催にも関わらず、今回も18名の方々が集まって、熱心な雰囲気の中で始まりました。
  今回は「集団給食の献立作り〜魅了あるメニューの組み立て方〜」をテーマに、公益財団法人学校給食研究改善協会、調理講師をされている大留光子先生を講師にお招きして行われました。現役の学校給食関係の栄養士のみならず、給食材料を提供・開発する会社で仕事をされている卒業生など、多方面で活躍されている方々が参加されました。

 講師の大留先生は、第4回(7月16日開催)に続き今年度2回目のご登壇となりました。今回は学校給食での献立作りをテーマに、「献立は栄養士からのメッセージ」という、長年先生が実践してこられたご経験を踏まえて、実務に役立てることのできる様々な情報を提供してくださいました。

 先生からご紹介いただいた集団給食での献立作りでのポイントは、

1. 伝えたい料理は何ですか? 
  *献立年間計画を作りましょう。
2. 「今日は何の日?」なども参考に年間計画を具体化させましょう。
 

*定番メニューと新メニューをうまく組み合わせましょう。
*「何だろう?」「美味しそう」など、関心をひくネーミングの工夫をしましょう。
*「年に1度しか出さない」「待ち遠しい思いを持てる」献立を工夫しましょう。

3.

調理師さんが考えた献立や、ふるさとメニューなどの献立を募集して、給食作りに関係する人たちに参加する喜びを持ってもらいましょう。

  *作る人、食べる人に参加する喜びを感じてもらうことで魅力ある献立にしていきましょう。
といったことでした。
 そして実際に先生が多くの方に喜んでいただいたメニューの調理実習に移りました。献立は、
◇お茶めごはん
 

「八十八夜」の献立として食べるお茶を利用した主食。

◇カラットくん
  お魚メニューコンクールで会長賞に選ばれた料理だが残菜が多かった。そこで「メニューに名前を付けて」と募集して決まったネーミングがこれ。「何だろう?」と興味を持たせることで「食べてみよう」「食べたらおいしかった」と人気のメニューとなったと考えられる。
◇さつま汁
 

鹿児島県の郷土料理。ごぼうのアク抜きを通して日本食の評価を解説したり、さつま芋の扱い方を通して施設での供食方法について情報を提供するなど、栄養士からの情報紹介例を解説していただいた。

◇焼き肉サラダ
  子供たちの大人気メニュー。サラダにたんぱく質食材を入れる時の工夫も合わせて紹介していただいた。
◇ピカ一パフェ
  新入学生に出すデザート。初めて給食に接する子供たちへの思いのこもった1品。食への思いをどう残すかを考えさせられた。
 どのメニューも特別ではない食材が用意され、短時間で調理して、あっという間に試食タイムとなりました。受講者にとって、手軽にできる、食材の組み合わせが新鮮、実際に取り入れたいなど、たいへん参考になった様子でした。一般日常的な料理であっても、ネーミングによって特別な印象を持つ料理として提供できるという発想を実感できた講習会となりました。
 なお、この「現場で役立つ調理フォローアップ講座」は毎月第3水曜日に開講され、各回の講座の内容や申し込みはこのホームページでご案内しています。

 

<第11回「現場で役立つ調理フォローアップ講座」開催報告〉

 

 この冬何度目かの降雪の天気予報が出された平成27年2月18日(水)18時30分から、女子栄養大学駒込校舎において、第11回「現場で役立つ調理フォローアップ講座」が開催されました。幸い雪にはなりませんでしたが、冷たい北風の吹き荒れる中、18名ほどの受講者が集まりました。今回は「学校給食における食物アレルギーの実情と対応」のテーマで、元東京都公立学校栄養教諭の堀江紀子先生を講師にお招きしました。まさに今学校給食に携わっている方や養護教諭として学校にお勤めの方など、日々現場での食物アレルギー対応に直面されている受講者も多く、とても熱心に講義を受けていらっしゃいました。
堀江先生は女子栄養短期大学食物栄養学科をご卒業後、約2年間集団給食施設で栄養士として勤務され、その後東京都公立学校栄養職員として32年間勤務されました。その間に管理栄養士免許、栄養教諭免許を取得され、さらに栄養教諭として4年間勤務された経験をお持ちです。
 
  はじめに先生がご紹介くださったのは、学校給食の食物アレルギーの実態でした。それは、
1.
学校生活管理指導表の提出を義務付けにしたら、食物アレルギー対応者が増えた。・・・提出すればやってもらえると考える保護者により、対応件数が増えた。
2.
管理指導表では、負荷試験や抗体検査をしていなくても「明らかな症状」を診断根拠として、医師が食物アレルギーと診断していることが多い。・・・自治体には血液検査を受けるよう強く求めたい。
3.
食物アレルギーのアレルゲンの種類が増えている。・・・花粉症でバラ科の食物がアレルゲンとなっている等。
4.
ひとりでアレルゲンを何種類も持っている児童、生徒が多くなっている。・・・卵、乳製品等の単一ではなく、合わせて大豆や甲殻類等がある。

1日も休むことのない食事作りに苦慮してこられた堀江先生のお話に、学校での対応の難しさを改めて考えさせられました。

 次に、学校給食での食物アレルギーの対応について具体的な紹介がありました。それは、

1.
除去食が基本。代替食はミスが起きやすい。食数、施設、調理員等条件を考えて実施することが望ましい。
2.
1つの料理には1つのアレルギー対応が基本。(事故を防ぐため卵も豆腐もダメな場合は豆腐入りかき卵汁は作らない。)
3.
エピペンを持つ児童、生徒には弁当持参を勧める。(給食の提供を求めることが多いがリスクが高い)
4.
アナフィラキシーショック症状を引きおこす食品は献立から除外する。(栄養管理で使用しなくても特に問題ないもの。そば、ピーナッツ、甲殻類、キーウィ)

実際に堀江先生が現場で行ってこられた食物アレルギー対応に関する事例の紹介は、身の引き締まる内容でした。

 そして、先生が関わってこられた学校給食における「ひやりはっと集」から、具体的に事例をご紹介下さいました。「保護者や調理職員と情報を共有すること」、「調理職員の意識を高めさせること」、「アレルギー対応食は児童に手渡すまで二重三重に確認する体制を整えること」、「アレルギー用の特別な食器を準備して対応すること」、「加工食品については原材料検収表に張り付けておくこと」、「新一年生には初めての食材があったら家庭で食べてみるよう勧めること」、「アレルギー症状が出たら速やかに救急車を要請するよう学校管理職に進言すること」などの予防策について解説して下さいました。

 さらに、献立作成、調理時に気をつける食材についてもご紹介下さいました。それは、
1.
特定原材料(省令で定められたもの)7品目(えび、かに、卵、乳、小麦、そば、落花生)
2.
特定原材料に準ずるもの(通知で定められたもの) 可能な限り表示することが奨励された20品目
3.
実際給食現場で除去している食材、除去した方がよいか悩んでいる食材、アレルギー用食材

 ここまでの堀江先生のお話から、食物アレルギーについては学校栄養士、栄養教諭だけでなく多職種の方々と連携して、細心の注意をして対応する必要があることを実感しました。毎日続く「食」の取り組みは、常に広く深く考えていくことが重要であることだと改めて考えさせられました。

 講義の後は調理実習に移りました。今夜のメニューは

1.
胚芽米ご飯
2.
照り焼きハンバーグれんこん入り(卵・牛乳アレルギーの対応。つなぎにすりおろしたじゃがいもを使用)
3.
ブロッコリーのクリーム煮(小麦アレルギーの対応。米粉を使用。乳アレルギーではバター・生クリーム無しでもよい。低カロリーの対応にも応用できる。)
4.
小松菜ケーキ(B同様米粉使用)
5.
小松菜ケーキ(卵、牛乳アレルギー対応。豆腐、豆乳、オリーブ油を使用)
でした。わいわいと調理実習をして、あっという間に試食タイムとなりました。

ハンバーグは鶏挽肉と豚挽肉、豆腐を混ぜ合わせ、玉葱、人参、れんこんのみじん切りとじゃがいものすりおろしをつなぎに成型して焼き、かつおだしの和風だれでいただきました。

クリーム煮はホワイトソースを作らずに野菜を炒めて短時間煮込むだけで出来上がりました。

小松菜ケーキは米粉とベーキングパウダーで十分膨らみ、卵・牛乳を使用しなくてもおいしく出来上がりました。 

 試食中に堀江先生が各調理台を廻って受講者の質問に答え、作り方についても丁寧にアドバイスをしてくださりとても和やかな時間となりました。「1つの料理には1つのアレルギー対応」の実践調理がよく理解できる講座だったと感じました。
 なお、この「現場で役立つ調理フォローアップ講座」は毎月第3水曜日に開講され、各回の講座の内容や申し込みはこのホームページでご案内しています。

〔取材 香友会広報部〕

 

〈第12回「現場で役立つ調理フォローアップ講座」開催報告〉

 

 ようやく春めいて暖かな夕刻となった平成27年3月18日(水)18時30分より、女子栄養大学駒込校舎において、第12回「現場で役立つ調理フォローアップ講座」が開催されました。この講座は女子栄養大学香友会(同窓会)主催の新規連続講座で、平成26年度4月から毎月第三水曜日に開講され、この第12回が本年度最後の開催となりました。今回は、本学卒業生ばかりでなく、「栄養と料理」の読者の方々も含めて25名ほどが受講。皆さん日々研鑽されていらっしゃることをひしひしと感じました。
 今回は「料理本のメニューを給食献立に活用するヒント」というテーマで、元学校栄養職員でいらした清水一枝先生を講師にお招きして定刻に始まりました。先生は、東京都の学校栄養職員として小学校と中学校に計39年間という長きにわたり勤務されました。講座は、おいしく食べてもらえる給食作りに携わってこられた先生ならではのヒントを得ようという受講者の熱気が強く感じられました。
最初の講義の内容は、
*大量調理の利点は余熱が使えること

味がしみ込みやすい。水分が蒸発しにくい。材料から水分が出てくる。途中で上下を入れ替えないと味に差ができてしまう。料理の味は調味料の割合=塩分が決め手なので必ず重量換算することが大切。料理本は少人数の分量が記載されているので、まず作ってみてから施設の状況や食数に合わせて調整する。

*施設の釜のクセを把握しておくこと

釜の表面積や深さ、沸騰までの時間、水分蒸発の違い、消火後の余熱の違い等、設備ごとに違いがある。自施設の設備を十分に把握した上で調整する。

*集団調理では調味料の割合を材料または水量に対する%で算出することが望ましい。
*料理本の調味分量のカップやスプーン(cc)を重量に変える換算表は必須である。
*料理本はメニューの流行や彩り、材料の組み合わせなどの参考になる。

といったことでした。「喜んでもらえる献立は…」と日々頭を悩ませている受講生の方々は、それぞれの施設の現状を思い浮かべるようにして、大変熱心に聞き入っておられました。そして先生は実際に使ってこられた調味料の重量換算表、調味料の塩分重量表、汁物・焼き物・煮物などの調味%の例を資料として配布してくださいました。集団給食で日常的に登場する調味料や食材、料理ばかりで、大変参考になるものであり、すぐにでも自施設での新メニューに応用できる貴重な資料だと感じました。
  続いて調理実習です。以上のことを踏まえての本日の献立は、

1.
ほたてご飯   炊き込みご飯の調味%の換算を学ぶ。
2. 筑前煮     煮物の調味%と水分量の考え方を学ぶ。
3. 茶碗蒸し    大量調理での茶碗蒸しの調味%と作り方を学ぶ。
4. 黒ごまプリン  大量調理でのよせ物デザートの扱い方を学ぶ。
の4品で、実習は各班4名ほどで和気あいあいとスムーズに行われました。講師の清水先生が各班を回って調理のポイントなどについて適切なアドバイスをされ、受講者の皆さんは「すぐにでも自施設で取り入れることができる。とても参考になった。」と満足されたご様子でした。実習後の試食タイムでも本日の献立を各施設でどう応用するかなど、活発な情報交換がなされ、とても有意義な講座となりました。

 1年間にわたって取材をして、この講座は、まさに集団給食関係の現場ですぐに役立つ実践的なテーマが取り上げられ、複数回受講された方が多いことからも大変充実した内容であったと感じました。
 なお、この「現場で役立つ調理フォローアップ講座」は平成27年度(4月〜)も毎月第3水曜日に開講され、各回の講座の内容や申し込みはこのホームページでご案内しています。

〔取材 香友会広報部〕

 

 

平成26年度 専門家講座ルポ

 

<第1回「専門家講座」開催報告>

 

 平成26年度第1回専門家講座が、6月7日(土)13時30分より、駒込キャンパス小講堂において開催されました。テーマは「肺の生活習慣病(COPD)の栄養療法と運動療法」についてで、女子栄養大学香友会が主催し、「カフェSSN」との共催で行われました。参加者は、主に病院や訪問介護に所属する管理栄養士、理学療法士、作業療法士など多職種の方々でした。
 講師には、埼玉医科大学病院呼吸器内科教授の金澤実先生、同じく栄養部呼吸サポートチーム(RST)管理栄養士の大出佑美さん、さらに順天堂大学大学院医学研究科 リハビリテーション医学 理学療法士の佐野裕子先生、国立がん研究センター中央病院栄養管理室室長の宮内真弓さんという、まさに最前線でご活躍中の方々をお招きしての講座となりました。
 座長はカフェSSNの宮本佳代子先生がつとめられ、それぞれの職責の方々が日々現場で対応に苦慮されている事例を含めて、基礎知識から実践へとつながるたいへん有意義で盛りだくさんな内容でした。
 まず、埼玉医科大学病院の金澤先生から、COPDの病態と治療及び低栄養のメカニズムと対策について約70分程度講義があり、同病院の呼吸サポートチーム(RST)での栄養士の活動について、栄養部の大出さんから、具体的に管理栄養士がどうかかわっているのかの紹介がありました。そこでは、管理栄養士として対象者の栄養管理状況の把握、身体状況推移の把握、そして人工呼吸患者の栄養管理に求められる最新知識の習得の必要性など、まさに現場で管理栄養士が何を求められているかが実感できるお話でした。
 そして順天堂大学大学院の理学療法士 佐野先生から、COPD患者の運動療法の実践について、先生が実際にかかわった患者への対応を例に、具体的にリハビリテーションの実例をご紹介いただきました。リハビリテーションとは楽しみを守る=QOLを向上させる、食べることを楽しみに変える、呼吸と嚥下はお隣同士、というフレーズがとても印象的でした。
 最後に、国立がんセンター中央病院の栄養管理室長である宮内さんから、COPD患者の栄養療法についての具体的な介入方法などの紹介があり、食品選択のポイントやおいしく食事をしていただく工夫などの実践的なノウハウを知ることができました。
  ここまでですでに3時間以上経過していましたが、会場は熱気を帯び、16時45分から質疑応答、フリーディスカッションとなりました。

 
質問では、たばこの煙に対する感受性の有無に有効な検査はあるのか、中国でPM2.5が増えているがそれとCOPD増加との関連は考えられるかなど、現在進行形での質問が出されました。専門分野のお立場から金澤先生や佐野先生からご回答いただき、参加された方々からは実践につながる知識を得ることができた、さっそく実務に取り入れてみたいなどの声が多数聞かれました。

長時間にわたる講座でしたが、1つのテーマでさまざまな専門分野の方々の実践的なお話を含めて情報を紹介していただき、とても有意義な講座でした。
 今年度の「専門家講座」は、日々の社会活動に役立つタイムリーなテーマで計6回の開催を予定しており(第2回の開催案内はこちら)、ますます期待が膨らむ講座となりました。

〔取材 香友会広報部〕

 

 

≪第2回「専門家講座」開催報告≫

 

 平成26年8月30日(土)13時より、女子栄養大学駒込校舎において、本年度第2回目の専門家講座が開催されました。
  テーマは「カメラマンとフードコーディネーターから学ぶ料理写真」。講師にお迎えしたフォトグラファーの川津貴信先生、大高英樹先生、岩朝祐昭先生は、平成24年度から毎年継続して講師をお願いしており、今回で4回目のご登壇。毎回好評なことから、今回はこれまでよりひとまわり規模を拡大しての開催となりました。また、プロの現場で料理写真を撮影する際に欠かすことのできない役割を担う、フードコーディネーターの技も学べるよう、様々な撮影の調理、スタイリング等に携わっておられる大橋厚子先生も講師としてお迎えしました。

川津貴信先生
大高英樹先生
岩朝祐昭先生
大橋厚子先生
 フォトグラファーの先生方からは、「カメラやレンズについて」、「光の種類について」、「カメラの設定について」などといった、きれいな料理写真を撮るための基本的なポイントから、少しの気遣いで素敵な印象になる撮影時のスタイリングや目的に応じた写真の撮り方など、料理写真をより美味しく見せるための工夫や技を教えていただきました。
   初心者は、まずは自分の持っているカメラの使い方を十分に知ること。何でも興味を持って、失敗を恐れずに撮影してみることが大切だということを教えていただきました。ひとつの料理でも色々なアングル(寄ってみる、引いてみる、角度を変えるなど)で撮影してみることで、ベストショットが生まれるかもしれません。悩みながら試してみるのも楽しいですし、後で見返してみた時に、どれが正しいかが分かることもあるそうです。

 フードコーディネーターの大橋先生からは、同じ料理を集団給食風、一般家庭の夕食風、雑誌風の3パターンで盛り付けた例を見せていただきました。選ぶ食器やランチョンマット、盛り付け次第で温かみのある写真になったり、おしゃれな雰囲気の写真になったりするのを実際に見比べてみることで、コーディネートの重要性を学ぶことができました。写真の場合、目で直接見ているのとは違った印象で写ることがあるので、実際の写真でバランスを確認しながら、スタイリングを変えていくことも必要だそうです。
  写真撮影のポイントやスタイリングのパターンを学んだあとは、実習の時間です。会場内にそれぞれ特徴のある9種類のセットが用意され、受講生は思い思いのアングルで撮影を楽しみました。
  最後の質疑応答では、これまで写真撮影について疑問に思っていたこと、どうしても上手くいかずに悩んでいたことなど、参加者から寄せられた質問に一つ一つ丁寧に回答をいただくことができました。
  料理写真撮影の上達をめざし、これからは日々の生活の中でたくさんの写真を楽しみながら撮影してみようと思いました。
  なお、今年度の「専門家講座」は、社会活動に役立つタイムリーなテーマで開催しており、第3回以降の開催案内はこちらをご覧ください。

 

≪第2回「専門家講座」開催報告≫

 

 平成26年8月30日(土)13時より、女子栄養大学駒込校舎において、本年度第2回目の専門家講座が開催されました。
  テーマは「カメラマンとフードコーディネーターから学ぶ料理写真」。講師にお迎えしたフォトグラファーの川津貴信先生、大高英樹先生、岩朝祐昭先生は、平成24年度から毎年継続して講師をお願いしており、今回で4回目のご登壇。毎回好評なことから、今回はこれまでよりひとまわり規模を拡大しての開催となりました。また、プロの現場で料理写真を撮影する際に欠かすことのできない役割を担う、フードコーディネーターの技も学べるよう、様々な撮影の調理、スタイリング等に携わっておられる大橋厚子先生も講師としてお迎えしました。

川津貴信先生
大高英樹先生
岩朝祐昭先生
大橋厚子先生
 フォトグラファーの先生方からは、「カメラやレンズについて」、「光の種類について」、「カメラの設定について」などといった、きれいな料理写真を撮るための基本的なポイントから、少しの気遣いで素敵な印象になる撮影時のスタイリングや目的に応じた写真の撮り方など、料理写真をより美味しく見せるための工夫や技を教えていただきました。
   初心者は、まずは自分の持っているカメラの使い方を十分に知ること。何でも興味を持って、失敗を恐れずに撮影してみることが大切だということを教えていただきました。ひとつの料理でも色々なアングル(寄ってみる、引いてみる、角度を変えるなど)で撮影してみることで、ベストショットが生まれるかもしれません。悩みながら試してみるのも楽しいですし、後で見返してみた時に、どれが正しいかが分かることもあるそうです。

 フードコーディネーターの大橋先生からは、同じ料理を集団給食風、一般家庭の夕食風、雑誌風の3パターンで盛り付けた例を見せていただきました。選ぶ食器やランチョンマット、盛り付け次第で温かみのある写真になったり、おしゃれな雰囲気の写真になったりするのを実際に見比べてみることで、コーディネートの重要性を学ぶことができました。写真の場合、目で直接見ているのとは違った印象で写ることがあるので、実際の写真でバランスを確認しながら、スタイリングを変えていくことも必要だそうです。
  写真撮影のポイントやスタイリングのパターンを学んだあとは、実習の時間です。会場内にそれぞれ特徴のある9種類のセットが用意され、受講生は思い思いのアングルで撮影を楽しみました。
  最後の質疑応答では、これまで写真撮影について疑問に思っていたこと、どうしても上手くいかずに悩んでいたことなど、参加者から寄せられた質問に一つ一つ丁寧に回答をいただくことができました。
  料理写真撮影の上達をめざし、これからは日々の生活の中でたくさんの写真を楽しみながら撮影してみようと思いました。
  なお、今年度の「専門家講座」は、社会活動に役立つタイムリーなテーマで開催しており、第3回以降の開催案内はこちらをご覧ください。

 

〈第3回「専門家講座」開催報告〉

 

 平成26年10月26日(日)13時30分から2時間、女子栄養大学駒込校舎において第3回専門家講座が開催されました。今回は、女子栄養大学栄養生理学研究室上西一弘教授より「日本人の食事摂取基準(2015年版)」の主な改定のポイントと活用方法についてご教授いただきました。好天にも恵まれ、最新の知識を得ようと約100名の受講者がありました。  
 以下、講義の概要です。
講義中の上西一弘先生
主な改定ポイントは、   
※詳細は項目をクリックしてください。
1)策定目的に、生活習慣病の発症予防とともに「重症化予防」を加えたこと。
2)エネルギーについて、指標に「体格(BMI)」を採用したこと。
3)生活習慣病の予防を目的とした「目標量」を充実したこと。


食事摂取基準はなぜ5年で改定されるのか?

栄養学は完全に理解できているのではない。例えば、カルシウムは妊産婦の負荷量を2005年になくした。つまり、間違ったまま利用しないようにする必要がある。数値は現時点で一番良いと考えられている値が用いられていて、それが真の値かどうかわからないためである。

摂取の回数・割合、速さなどの健康影響について、以下のように述べられている。

1日の中での食事回数(頻度)、特に朝食の有無が肥満や循環器疾患などの発生率に関与している可能性が報告されている。1日の中の食事の間でのエネルギーや栄養素の摂取割合の違いがメタボリック・シンドロームなどに影響していたとする報告もある。睡眠の時間帯の違いと栄養素摂取量との関連も報告されている。これらは、ヒトが有する生物学的な概日リズムがエネルギーや栄養素の摂取や代謝に関わりがあること、及び概日リズムと日常の生活のずれがそれらの代謝に関連することを示す可能性を示唆する結果として注目される。
 また、摂取速度が、肥満やメタボリック・シンドローム、糖尿病に関与しているとの報告も存在する。これらは、習慣的なエネルギー・栄養素摂取量だけでなく、むしろ、摂取のタイミングや速度などが身体に与える生理学的な影響に着目した考え方である。しかしながら、日常生活の中での食事摂取は、生物学的な概日リズムと共に外的な要因の影響も受けており、更なる基礎研究並びに疫学研究が必要であると考えられる。現時点においては研究途上であり、今後の課題であると考えられる。

日本人の食事摂取基準(2015年版)策定の方向性

図1には、生活習慣病の重症化予防が明記され、また、有効活用は、管理栄養士だけではなく医師等保健医療関係者とあり、医師を強く意識している。
自立した日常生活を営んでいる人を含む。(入院している人は含まない。)治療を目的とした場合は食事摂取基準を理解したうえで、各種疾患ガイドラインを使用する。このガイドラインと食事摂取基準の改定はずれているので、どちらも最も新しいものを使用する必要がある。

食事摂取基準の活用の基本は、下図の通り、アセスメントに基づいて実施する。
その他の変更点
「PFCバランス」を「エネルギー産生栄養素バランス」と改めた。
専門職においては、食塩相当量やナトリウムのことを「塩分」と言うのは良くない。

コレステロールの目標量が削除された。このことは、エビデンスが集積されていないので削除されたのであり、多量摂取には注意する必要がある。

従前は「基準単位」と表現していたが、望ましい体位ということではなく、日本人の平均的な体位であることから、その表現を「参照体位」と改めた。

妊娠期の区分が変更された。
2010年版:妊娠初期(16週未満)、中期(28週未満)、末期(28週以降)
2015年版:妊娠初期(〜13週6日)、中期(14週0日〜27週6日)、末期(28週0日〜)

ビタミンAは、2010年版では「レチノール当量(RE)」から2015年版では「レチノール活性当量(RAE)」に変更された。

栄養素の数値がところどころ変更されているので、2010年度版と比較して確認すること。
最後に

日本人の食事摂取基準2015年版をよく読み、実際は、食品や食事レベルにしていかなければならない。
例えば、モリブデンはどういう食品に多いか調べ、それをどこで購入し、どのように料理するかまで考えていくことが大切である。

            写真は講義風景

参考のサイト
http://kawaru.biz/shokuji2015/(動画コーナーと予習教材)
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000056112.html
(日本人の食事摂取基準(2015年版)スライド集について)

短い時間でしたが、要所要所を押さえた大変わかりやすい充実した講義でした。
〔取材 香友会広報部〕

 

≪第4回「専門家講座」開催報告≫

 

 平成26年11月15日(土)13時30分より、女子栄養大学駒込校舎において、本年度第4回目の専門家講座が開催されました。今回は、栄養・食・保健の専門職だけでなく、各職場で生涯学習や研修会などを企画運営する職務に就いている方も対象にしたテーマ「魅力ある講演・講座の企画とは」が企画されました。

 講師にお迎えした高島哲夫氏は、長く大手広告代理店のPR部署等でご活躍後、現在は郷里の新潟県広報監に就任されています。講演の冒頭にご自身のプロフィールをお話されましたが、早速そのお話の中で、相手(社会)に届く広報をするための考え方や切り口(ヒント)、手法などについて様々な具体例が示されました。

 

写真は講師の高島哲夫先生

 講演では、まず、「広告と広報の違い」について、次のような説明がありました。
広告(advertising・略称AD)は、広告主が買い取った広告媒体を通じて、対象者に向けて商品やサービス、アイデアなどの情報を伝えること。
広報(public relations・略称PR)は、企業などの組織や行政などの各種団体が、直接的または間接的にその活動や商品などの情報を伝え、また情報や意見を受け入れること。
 次に、「魅力ある企画の作り方」について、項目を立てて説明がありました。

目的を明確にする
本来の目的をはっきりとさせ、「何をもって成功とするか」を決めておく。

ターゲットを決める(性別、年齢、職業、家族構成、居住地域、収入、学歴 等々)
対象を絞る(限定する)と、内容が濃いものを企画することができ、広報も効率良くできる。

いつどこで実施するか、予算(収支)を立てて調整する
例えば、企画内容や対象者と関連する組織・団体(自治体、学校、企業、商店街、コミュニティなど)と連携や協賛することで、そこが持つネットワークを利用できて効率よい広報が可能であり、また、会場や講師、材料、人手などが提供された場合経費削減に繋がる。

受講者(対象者)の視点に立って企画する(マーケットイン)
・ターゲットのニーズに応じた企画を立案する(受講者にどんな発見や喜び、驚き、意義を与えられるか)。
・時事ネタ(季節性、国際性、ギネス性、物語性など)を組み入れる。
・面白がらせる工夫を取り入れる。例えば、見た目、視点(立場)、役割を変えて意外性を作る。映像(動画)を用いて動きを作る。「絵」になるところを決める。続編を考える。

 また、対象者への告知(広報)では、
告知時期のタイミングを計る(遅くても早くてもダメ)。一般的には、50日前、次に30日前、直近には電話やFAXで。また、SNS、連携(協賛)先のパブリシティやネットワークを有効に利用する。
告知媒体には、対象者に必要な項目をわかりやすく明示し、キーワードは目立つように工夫する(例えば吹き出しにする)。
マスコミを介して告知する、あるいはマスコミに取材を依頼するには、ニュースリリースを作成し依頼状を送付するとともに電話でも依頼する。

 最後に、準備運営にあたっての留意点として、実施日までのスケジュール表を作成して管理することや、事前に様々なリスク(会場や講師の変更、交通トラブルや自然災害など)への対応を考えておくことなどが示されました。
 高島講師の豊富な経験に裏打ちされた講演内容はたいへん明瞭で興味深く、90分間があっという間に過ぎた講座となりました。

〔取材 香友会広報部〕

 

≪第5回「専門家講座」開催報告≫

 

 平成26年12月14日(日)13時30分より、香友会主催「第5回専門家講座」が女子栄養大学駒込校舎において開催されました。今回は、(株)ヘルスプランニング代表取締役の西口榮子先生を講師にお招きし、「口腔ケアと栄養ケア―噛める幸せー」と題したご講演をしていただきました。
 栄養士は、ほとんどの場合「食べられる」ことを前提に何をどう食べるか、食べたら良いかについて考え、行動しているように思います。「噛める幸せ」というフレーズは新鮮な受講動機となりました。当日の受講生の中には、小児肥満外来で栄養指導を担当している管理栄養士などの専門職も多数おいでになり、改めて「食べる」ことについて考えるとても貴重な時間となりました。

 講師の西口先生は、広島大学教育学部家政科をご卒業後、女子栄養大学大学院の生化学教室で吉川春寿先生のご指導を受けて修士課程を終了され、東京医科大学(生化学)で医学博士を取得されました。そして、湘南短期大学歯科衛生士学科(現:神奈川歯科大学短期大学部歯科衛生士学科)教授として勤務されたのち、ご自身が培われたことで何か社会に貢献したいとの思いから(株)ヘルスプランニングを立ち上げられました。

講師の西口榮子先生

 「食」を中心にした健康管理コンサルタント業という新しい分野の業種の先駆者でもいらっしゃいます。 今回の講座では「食べる」ことの原点が「噛む」ことにあることを強く感じることができました。それはまず講義資料の最初に「口から始まる全身の健康」と書かれていることから気付かされました。食べ物が体の栄養となるためには「噛んで食べる」ことが必要であるということに改めて思い至りました。そしてそれは健康増進法に基づいて出された「健康日本21」の第二次目標にしっかりと掲げられているとの説明からもよく理解することができました。第一次では「歯の健康力」として虫歯を減らすことを中心に数値目標が挙げられていましたが、第二次では「歯・口腔の健康に関する生活習慣病及び社会環境の改善」として、口腔機能の維持・向上や歯周病の罹患者数を減らすなど、より細かな数値目標がたてられたからだということでした。食物の栄養だけではない食事と健康に関連する分野の広さを再認識させられました。
では「なぜ噛んで食べることが大切なのか」について先生は次のように具体的に解説してくださいました。

1. 噛むことで大脳が活性化する。
2. 五感が刺激され意識がしっかりしてくる。
3. 内臓が目覚め消化吸収の準備ができ始める。
4. 唾液の分泌が促される。
また噛んで食べる経口摂取という栄養素を体内に取り込む手段と比較するため、病院や施設で用いられている経管経腸栄養の利点・欠点の説明があり、噛むことで五感が刺激され、噛まないと細菌が体に入りやすくなることがよく理解できました。

 次に歯の構造と噛む力、咀嚼の作用について生理学的な脳や筋肉の解説図を見ながらお話しいただきました。1回咀嚼することで脳血流が30%増える、ガムが認知症対策にも利用されているなどさまざまな情報を得ることができました。また硬いもので作った食事と軟らかいもので作った食事をとった場合の比較では、全身持久力の低下や筋肉量の減少が見られ、しっかり咀嚼することが運動機能の維持や向上にもつながっていること。良く噛むと副交感神経が刺激され、リンパ球が増えて免疫力が高まること。摂食抑制作用を持つ神経ヒスタミンの活性化も認められ、肥満防止にもつながること。さらに噛めないことによっておきる背・肩・首のこりや痛み、股関節の痛みや違和感、耳鳴り、睡眠障害といった身体症状やうつ病、不安症といった精神症状の説明がありました。そして近年さかんにいわれている歯周病と糖尿病、口腔機能と低栄養に関してもさまざまな統計資料等を使ってわかりやすく解説してくださいました。噛んで食べることの重要性を再認識させられたあっという間の時間でした。
 最後に先生から栄養士にとって大切な噛み力を鍛えるために有効な“食事のコツ”についてご紹介がありました。それは、

食材を大きめに切る。
ご飯を噛みごたえのある玄米にする。
味付けは濃い味より薄味にする。
複数の食材を組み合わせ、いろいろな硬さをまぜる。「利き顎」の逆側を意識して使うようにする。

根菜やキノコ類、乾物、こんにゃくやイカ・タコなどの魚介類等歯ごたえのある食材を使った料理を提供する。

その他として急いで食べない、飲み物で流し込まないことも大切。
といったことでした。また自律神経のバランスを整える食べ物として、

生姜、にんにく、根菜類など体を温めるもの

野菜、キノコ類、海藻、玄米など食物繊維を多く含むもの
納豆、漬物、ヨーグルトなどの発酵食品
梅干し、長ネギ、セロリなど酸味、辛味、苦味の強いもの

などのご紹介もありました。食べることに関するお仕事をされている受講生の皆さんは、すぐにでも実践できる内容とあって熱心にメモをとりながら聞いていらっしゃいました。
 講義の後には質疑応答の時間が設けられ、それぞれの質問に丁寧に回答していただきました。噛むことの効用は多くあり、全身の健康はその入り口である口への健康にあり、良く噛んで食べることが健康への第一歩と言えるという先生のまとめはとても大きく心に残りました。

〔取材 香友会広報部〕

 

 

平成26年度 市民講座ルポ

 

〈第1回「元気はつらつ市民講座」開催報告〉

 

今年度第1回目の元気はつらつ市民講座が、7月29日(火)10時30分より、香友会館において開催されました。講師は、本学卒業生でベトナム料理研究家のトラン・ティ・ハー先生。「ヘルシーなお手軽ベトナム料理」と題し、先生の楽しいお話を交えたデモンストレーションと試食がおこなわれました。

2年前にもハー先生にベトナム料理の講座を持っていただいたところたいへん好評で、リクエストに応じて再度企画されたとのことです。蒸し暑く食欲も低下しがちなこの夏、食卓にヘルシーなベトナム料理を取り入れて元気に乗り越えようと、猛暑の中21名の受講者がありました。

  

右写真は講師のトラン・ティ・ハー先生

ハー先生が用意されたメニューは、

*レモングラス炒飯

*冬瓜スープ

*タピオカ入りトウモロコシぜんざい

レモングラス炒飯は先生のオリジナルで、どこのベトナム料理店にいってもお目にかかれません。レモングラスの香りがさわやかで夏にふさわしい味覚の炒飯でした。冬瓜スープは冬瓜のやさしい歯ざわりとエビのプリプリ感が生かされたうえに、ヌックマムの香りがスープの味をひきたてる素晴らしい一品でした。タピオカ入りトウモロコシぜんざいは、やさしい甘さのトロトロゼリーの中にタピオカとトウモロコシの歯ごたえがアクセント。ココナッツミルクをかけることにより一層まろやかになり、女性にうれしいデザートでした。
 ベトナム料理は薄味のものが多く、好みにより自分でヌックマムやトウガラシを加えていただくようです。暑い国のベトナムに根付いたお料理は、昨今一段と暑さが増した日本の夏にもピッタリのはず。夏を乗り切る知恵の詰まったお料理を教えていただいたうえに、ハー先生の優しくて大らかなお人柄にふれた充実した講座でした。

 なお、今年度の市民講座は計5回開催される予定で、各回の講座の内容はこのホームページでご案内しています。

〔取材 香友会広報部〕

 

<第2回「元気はつらつ市民講座」開催報告>

 

 まだ暑さが残る平成26年9月4日(木)10時30分より、第2回「元気はつらつ市民講座」が香川綾記念教育交流センター香友会館において開催されました。
この講座は香友会館を会場に年数回開催され、女子栄養大学と香友会館がある坂戸市を中心に、近隣の市民の皆様に各自治体の広報媒体を通して参加を呼びかけています。今回はお隣の鶴ヶ島市でも広報し、男性を含む40歳代〜60歳代の市民の皆さん29名の参加がありました。

 講座は、女子栄養大学調理学研究室助教の駒場千佳子先生を講師に迎えて「野菜料理をおいしく!」をテーマに、講義と試食という構成で約2時間実施されました。
 先生は、自己紹介で、「調理学」という大きなくくりの中で「ヒトがどのように食事作りに取り組むのか。家庭で、学校で、食事観や食事を整える力、調理技術をどのようにして身につけるか」など、ヒトに対するアプローチを研究していることを話して下さいました。

そのきっかけは、栄養士を目指して本学に入学したにもかかわらず、リンゴの皮もむくことができない学生がおり、「それでも栄養学を学びたいの?」という疑問からだったそうです。そこで、学生にインタビュー形式で調査してみたところ、小学生時代はほとんど全員お手伝いをすることで調理の経験をもっていたが、その後、生活すべてを親が面倒みてくれていたグループと、否応なしに食生活にかかわりを持たざるを得なくなった(就労した母親の代わりに家族の食事や自身の弁当を作るなど)グループに分かれ、少し調理ができるグループとほとんどできないグループに分かれてしまうことが明白になってきたとのことでした。食生活をとりまく時代背景や食育の変遷(左利きを配慮した主食・主菜・副菜の配置について等)をふまえて、「食べる」という日々の営みを次世代に継承することの必要性について、参加された皆さんは感慨深げに傾聴していらっしゃいました。

そしていよいよ、今日のテーマ「野菜料理をおいしく!」の講義に移りました。資料とスライドを使用して、まるで大学での授業のような90分でしたが、受講生の皆さんは全員メモをとりながら、大変熱心に先生のお話を聞きもらすまいと集中していました。

その講義には
・野菜を食べる時の栄養的な特徴として、副菜としての役割が重要
・色素の機能性成分が多く認められてきている
・加熱によるテクスチャーで感じるおいしさは国によっても異なる
・野菜料理をおいしく整えるには

 どんな料理をつくるのか?    生で?  加熱して?
  収穫した時期はいつ?      畑で採れたて? 収穫後何日たった?
  食べるのはいつ?        すぐ食べる?  食べきれないから保存する?
  誰がどんな状況で食べるのか?  食嗜好? 年齢? 前後の食事は?
  など、さまざまなヒントが含まれていました。

 中でも一番心に残ったのが「料理は脳を活性化してくれる」でした。おいしいと感じる料理を作るには、瞬時にいろいろな判断がその時々に求められること。判断をするためにはさまざまな知識と経験が必要であること。簡単に手軽に調理するために、市販の合成調味料等などもその特性を知り尽くして利用する。そして、おいしく、楽しく料理して、食材に感謝してたっぷり栄養をいただく。

このような点を参加者各自が
・小松菜と豚肉のどんぶり
・玉葱とトマトの中華風スープ
・みどりのお浸し
  (チンゲン菜・オクラ・アスパラガス)

の3品を試食しながらかみしめているようでした。  
 参加者からは「作り方が簡単でさっそくやってみたい」などの感想があり、また「スープで使う油はどんなものが最適か」などの積極的な質問もあり、活気あふれる講習会でした。

〔取材 香友会広報部〕

 

第3回「元気はつらつ市民講座」開催報告

 

 平成26年11月28日(金)13時30分より、第3回「元気はつらつ市民講座」が香川綾記念教育交流センター香友会館にて開催されました。
 講師は「キッチンサロンEGUCHI」主宰の江口君江先生で、テーマは「先取りクリスマス・シュトーレン」について、参加者は25名でした。

 まず、先生から説明があり、2人1組になって実習しました。「ゆっくり説明するのが丁寧ではないのよ」とおっしゃる先生はてきぱきと説明され、各テーブルをまわって指導してくださいました。発酵の待ち時間や、焼き上がりの待ち時間の間に、クリスト・シュトーレンの説明やご自身の話をしてくださいました。
 シュトーレンは地域によって使用する材料が違ってくるそうで、今回はドイツで教わったものに改良を加えたものを教えてくださいました。シュトーレンの形は諸説あるそうですが、横から見たときに山のようになっていて中央の部分がキリストを表しているそうです。また、バターをたっぷり使用しますが、クリスマスだけの特別なものだからで、11月の終わり頃から4週間かけて日曜日ごとにシュトーレンを1切れずつ食べるのだそうです。
  先生は、製菓科に通って1年くらいした頃に、缶コーヒーの甘さが甘すぎると思うようになったり、有塩バターと無塩バターではお菓子の味が違うことがわかるようになったとのことです。それでフワフワのケーキよりもシンプルな材料で作ったお菓子が好きになったそうです。
最後に先生が作ってくださったものをみんなで試食しました。焼きたてはしっとりしていて3週間くらいたつとしっかりとしたものなるそうです。自分たちで作ったシュトーレンはお持ち帰りして、クリスマスに向けてゆっくりと味わって大切に食べたいと思う出来栄えでした。材料費は高価ですが、買ったものとは全然違った味わいのシュトーレンでした。参加者のみなさんも笑顔で盛況な講座となりました。
 

〔取材 香友会広報部〕

 

〈第4回「元気はつらつ市民講座」開催報告〉

 

 平成26年度の第4回「元気はつらつ市民講座」は、1月30日(金)10時30分より、香友会館にて開催されました。当日は雪まじりの雨というあいにくのお天気でしたが、近隣住民の方々19名の参加がありました。

 講師に「さかな丸ごと食育」養成講師・管理栄養士の岡野治恵先生をお迎えして、「魚をきわめて料理名人になろう!」をテーマに講義をしていただき、その後調理実習となりました。
 講義では、日本人の魚介の摂取量が減少しているという問題点が示されました。特に若年層での魚離れは顕著で、子供は魚の生臭いにおいが嫌いで、また骨があるので食べるのが面倒と魚を避けるようになる。すると、作る側も子供が食べないし作るのも面倒であり、また肉より割高であることも重なって、毎日の食卓に並ぶ機会が減るという悪循環になっているようです。

 
「さかな丸ごと食育」養成講師の
岡野治恵先生
 そこで、まずは手軽に作れて美味しい魚料理を習得しましょうということで、「いわしのかば焼き」「野菜たっぷりいわしのつみれ汁」の2品を調理実習しました。一人にいわしが2尾ずつ配られ、はじめに手開きの実習です。中には手開きは初めてという方もいらっしゃいましたが、皆さんきれいに仕上げられていて簡単さに驚いていました。1尾はかば焼きに、もう1尾は身を叩いてつみれ汁にしました。かば焼きはつやよくふっくらと仕上がり、つみれ汁は食感よくしょうがの香りがきいた上品な一品となりました。試食では、胚芽米ご飯、ほうれん草とえのきだけのあえ物も用意され、バランスのよい献立になりました。
 岡野先生(本学卒業生です)はお元気で健康そのものという感じです。「四群点数法」を基本に食事に気を付けていることはもちろん、なるべく身体を動かすよう心がけているそうです。たとえば歩く時は大股で、歯磨きをしながらスクワットをするなどはすぐに実践できそうです。参加された皆さんには、魚料理の他に健康的な生活習慣のお話も参考になったようです。
〔取材 香友会広報部〕

 

〈第5回「元気はつらつ市民講座」開催報告〉

 

平成27年2月6日(金)、香友会館(坂戸市)において、平成26年度第5回「元気はつらつ市民講座」が開催されました。今回は、女子栄養大学生涯学習講師・本学茶道部講師の浅間玲子先生を講師にお迎えして「寒中のお茶事〜寒い冬のひととき、おしのぎとお菓子と抹茶で楽しみましょう〜 」をテーマに開催されました。
講師の浅間玲子先生

 茶時とは、茶の湯において懐石、濃茶、薄茶をもてなすお茶会のことをいいます。浅間先生による茶道の講座は大変人気があり、例年この時期に開かれています。今回も15名(女性14名男性1名)の参加者がありました。
 演習は、本学茶道部の学生達が招く側となり、参加者は招かれた側として「(寄付)白湯で喉を潤し→(席入り)→(炭点前)→(懐石)懐石風お弁当→主菓子→濃茶→干菓子→薄茶」の順番に進められました。
 濃茶をいただく前に胃の中に入れておく一汁三菜(ご飯汁物と煮物焼き物和え物)の食事はおしのぎといい、今回は、女子栄養大学学生食堂で作っていただきました。

[献立] 
◇銀鮭の西京味噌焼き 
   さつま芋の甘煮 ししとう
◇煮物 
〔鶏肉 高野豆腐 筍 
        人参 椎茸  絹さや〕

◇金平ごぼう
◇菜花の辛子和え
◇煮物椀
 〔自家製卵豆腐 しめじ 水菜 ゆず〕

◇胚芽米ごはん 煮豆 

 

 先生に料理を食べる時の所作を教わりながら、お弁当をいただきました。会場の和室に座卓が備えられ、座卓を使用することで腰を屈めなくてもお膳に手が届き、身体への負担が軽減されました。
 おしのぎが終わると、場を改めて学生がたててくれた濃茶を戦国武将の家紋入り茶碗≠ナいただきました。10人の武将の家紋が1人ずつ描かれており、家紋を拝見しながらいいただく濃茶はまた格別でした。ちなみに私は黒田官兵衛の家紋でした(喜)。

茶懐石は体にとっても作法にとっても全ての基本であるということで、適度な緊張感が漂う中で作法を学びましたが 作法は実は堅苦しいものではなく綺麗で無駄のない動きというものでした。もてなす側ともてなされる側の一瞬の心の交流がとてもすてきに思えたひと時でした。
 最後に、参加された方々から「先生のお話がわかりやすく、楽しいひと時だった」「先生の生徒への温かさを感じた」「茶道の深さを学んだ」「菜の花の辛和えが美味しかった」などの感想をいただきました。外は寒い日でしたが、皆さんは心を温かくしてお帰りになりました。

〔取材 香友会広報部〕