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季節を楽しむ保存食 vol.3

梅シロップづくり

2015.06.30 連載コラム
季節を楽しむ保存食 img01

 「梅しごと」6月の雨の季節に入るころ、その年に収穫した梅の実を使って、 梅酒や梅干などをつくることを、梅しごとというそうです。 保存食に興味を持つまで知らなかった「梅しごと」ということば。 そのやわらかなことばの響きにひかれて、昨年から少しずつ梅しごとをはじめました。

 まず挑戦したのは青梅の甘露煮。簡単に言ってしまうと、青梅を砂糖と水で煮るだけ。 手軽にできそうな感じがしましたが、梅の皮が破れたり、少し手を抜くと苦味や酸味が残ったりと、とても難しいものでした。 今年もチャレンジしてみましたが、納得する出来上がりにはなりませんでした。

 次に挑戦したのが梅シロップ。こちらは、甘露煮に比べるととても簡単です。必要な材料は、梅と砂糖。 作り方は、保存容器に梅と砂糖を交互に入れ、1日1~2回、保存容器をゆするだけ。 昨年は、青梅+氷砂糖、青梅+黒糖で作ってみました。 氷砂糖で作ったものは、すっきりした甘さに、黒糖で作ったものは、黒糖独特のコクのある甘さに仕上がりました。

 材料も作り方も、とてもシンプルなのですが、保存食の本やレシピをいろいろ見ていると、 細かいところで、違う点がいくつも出てきます。
 まずは梅。梅は青梅を使うとよい、完熟梅は適さないと書いてあるものがほとんどですが、 完熟梅でもおいしく作れると書いてあるレシピもあります。 作り方も、梅を一晩冷凍させてから作ると梅の繊維が破壊されてエキスが出やすくなるというものがあるかと思えば、 冷凍した梅は風味が弱くなるので、冷凍しない方がよいというものまで。 他にも、梅に穴をあけた方がよいとか、天地をカットした方がよい、穴はあけてもあけなくても大差がないなど・・・。

 それぞれの長所や短所を知りたいと思い、今年は冷凍させた梅、冷凍させない梅で違いが出るのか試してみました。 今回使用した梅は、「地域食振興実習」という授業の一環で、埼玉県越生町にある梅農園にお邪魔して、 梅の収穫、選果(キズのあるものや小さいサイズのものを選別する)作業を体験してきた際に、 キズがあって出荷できないという梅を、特別にいただいたものです。

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埼玉県越生町にある梅農園にお邪魔しました

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梅の収穫作業を体験しました

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キズのあるものや小さいサイズのものを選別する「選果」作業

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選別した梅を袋づめ

 レシピは、冷凍していない梅500g+氷砂糖500gと冷凍した梅500g+氷砂糖500gの2種類。 青梅を水洗いし、水気をよく拭き取り、竹串でなり口(ヘタ)をとった後、キズのある部分を包丁でカットします。 (梅を冷凍させる場合は、この段階で、チャック付きの保存袋などに入れて冷凍庫へ入れてください。) 保存容器に氷砂糖と交互に入れて完成です。

 同じ日に仕込んで、出来上がりまでの14日間を観察してみました。
 冷凍していない梅は、氷砂糖がゆっくり溶けていきました。 6日目ころから発酵する少し手前のような状態になり、10日目に発酵が始まってきたような様子があったので、 冷蔵庫へ入れました。13日目に確認したところ、発酵が落ち着いたような状態だったので、冷蔵庫から出し様子をみました。 14日目には、ほぼ氷砂糖が溶け、すべての梅がシワシワになり、梅のエキスが抽出されたような感じがしました。 シロップは、加熱前も加熱後も、さわやかな梅の香りがする甘みの強いシロップになりました。
 冷凍した梅は、氷砂糖が溶けるスピードが速かったです。10日目には、ほぼ溶けていました。 ですが、出来上がりのシロップの量に大差はありませんでした。 発酵するような様子もなく14日間過ごせたのですが、梅の1/3くらいが、シワシワにならず、 梅のエキスが十分に抽出できなかったような感じがしました。 加熱前のシロップの香りは、少し青い匂い。味は、酸味というよりも苦味が強い感じでした。 ですが、加熱した後は、青い匂いも苦みも消え、ほどよい酸味と甘みになりました。

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仕込んで14日目:冷凍していない梅

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仕込んで14日目:冷凍した梅

 今回の梅シロップ作成で気がついた私なりの感想をまとめてみました。
梅を冷凍しないメリット
・梅を買ってきてすぐに作れる
・冷凍梅より、梅のエキスが抽出されている感じがする

デメリット
・冷凍梅より時間がかかる(出来上がりまで14日ほど)
・梅がシロップに浸かっていない(乾燥している)状態がつづくと発酵する可能性がある
・梅が旬の時期にしか作ることができない
・冷凍した梅に比べて酸味が少し弱い

梅を冷凍するメリット
・梅の繊維が破壊されてエキスが早く出るので出来上がりが早い(出来上がりまで10日ほど)
・発酵する可能性が低い
・好きな時(梅が旬ではない季節)に作ることができる

デメリット
・冷凍する手間、冷凍保存するスペースが必要
・冷凍していない梅に比べて甘みが少し弱い
・抽出されるシロップの量にあまり大差がない
・冷凍していない梅と比べると、エキスが十分に抽出されていない感じがする

 香りも味も、少し違った2種類のシロップ。同じ日に仕込んでみて初めて知った違いでした。

(食文化別館HP制作チーム ・ 新井純子/2015.06.30)


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仕込んで14日目:シロップの量は、ほとんど同じでした
(左)冷凍していない梅(右)冷凍した梅

梅シロップづくり 覚え書き

「おいしい梅シロップづくりのための基本データ」

材料:梅、砂糖

梅:一般的に、若く果肉が硬い新鮮な青梅を使うとよいといわれている
青梅は酸味があり、キレのあるさわやかな香りのシロップになる
完熟梅は酸味が少なく甘い香り 青梅に比べるとエキスの量が少なめ
糖度が高く発酵しやすいので、カビが発生しないように注意する

砂糖:上白糖、グラニュー糖、氷砂糖、てんさい糖、きび糖、黒糖など好みのものを使用する。
上白糖、グラニュー糖、氷砂糖は、すっきりした甘さに仕上がる。
てんさい糖、きび糖、黒糖は、コクのある甘さに仕上がる。

使用する道具:竹串、保存容器、鍋
保存容器:ふたがきっちり閉まるものがよい
使用する前は、しっかり消毒する。
鍋:ホウロウやステンレスの鍋がよい

「梅シロップ」の作り方
材料
青梅500g、砂糖500g
1 青梅を水洗いする
2 水気をよくふき取るく
3 竹串でなり口(ヘタ)をとる
※梅を冷凍させる場合は、この段階で、チャック付きの保存袋などに入れて冷凍庫へ入れる
4 保存容器に、梅と砂糖を交互に入れ、最後に砂糖で梅を覆う
5 冷暗所に保存し、1日1~2回、保存容器をゆすって梅と砂糖を混ぜ合わせる
6 10日~14日後、梅がシワシワになったらシロップから取り出す
7 シロップを鍋に移し、沸騰させないように15分ほど加熱する(殺菌と発酵を止めるため)
8 消毒した保存容器に移し、しっかり冷めたら、冷蔵庫で保管する