「卒業生らしいコラムを書いて。」
立ち上がったばかりの別館HP制作チームの会議で出た私への課題。
少し大げさにいうと、これが保存食をつくることに興味を持ったきっかけでした。
文化栄養学科※を卒業して、就いた職業はプログラマとツアーコーディネーター。
およそ栄大生らしからぬ仕事をしていた私は、「卒業生らしい」ということばにこめられた期待に、
どうやって応えたらよいか、思案の日々が続きました。
そんな時、偶然みつけた保存食作りのワークショップ。最初は、コラムのヒントになれば・・・と、
ヨコシマな気持ちで参加しました。しかし、何度か参加しているうちに、
コラムのこともすっかり忘れ、保存食作りの楽しさにハマっていました。
※2006年「文化栄養学科」から現在の「食文化栄養学科」に名称変更しました。
保存食に興味を持って1年。生活に目を見張るような大きな変化はありませんが、 日々、あわただしく過ごしていると見逃してしまいそうな四季の移り変わりや季節の香りを、 以前より身近に感じるようになりました。 出来上がりを待つわくわくした時間。出来上がったときの感動。 保存食作りの楽しさは、そんなところにもあるのかもしれません。
手始めに参加したのは、昨年1月の味噌づくりワークショップ。 塩麹が流行して以降、麹を使って作る味噌や醤油に関心を持つ人が増え、 味噌づくりが、ひそかなブームになっているとかで、私が参加したワークショップも、告知後すぐに定員になり、 たくさんのキャンセル待ちがあったそうです。
初めての味噌づくりは、下準備が終わった段階からの作業だったこともあり、想像していた以上に簡単なものでした。
材料は大豆、麹、塩。手順は、煮た大豆を潰し、麹と塩を混ぜて容器に詰めるだけ。
あっという間に出来上がりました。
出来上がった味噌は、重石を乗せ10月頃まで発酵熟成させます。
途中、梅雨が明けた頃に様子を見たら、所々にカビが発生していました。
カビが発生している部分を、消毒したスプーンで削り取り、また発酵熟成。
気になって8月中旬に様子を見たら、またカビが・・・。
秋までこのまま熟成させる自信がなくなり、小さな保存容器に移し替えて、冷蔵庫へ。
10月まで待たずに食べはじめてしまいましたが、きちんと「味噌」になっていました。
仕込んでから時間をかけてゆっくり出来上がった味噌は、愛着もひとしおです。
手前味噌ですが、家族からの評判もよく、「味噌汁があまり好きじゃない」母も「おいしい」と言っていました。
今年は1月下旬に自宅で、2月中旬に学校で味噌づくりをしました。
一から準備して作るのは初めてだったので、どうなることかと思いましたが、今のところ順調にできていると思います。
最後に覚え書きとして手順を記しましたので、ご興味がありましたら、ご覧ください。
味噌は、みなさんご存じの通り、発酵食品です。味噌の発酵熟成は、微生物の働きによるもの。 同じ材料、同じ条件で仕込んでも、作り手、保管状況によって微妙に出来上がりの味が違ってくるそうです。 まさに「我が家の味」といえるのではないでしょうか。今年の味噌の出来上がりが今からとても楽しみです。
出来上がりまでの途中経過や天地返しの様子、自宅で作った味噌、学校で作った味噌に味の違いは出るのか?など、 随時、お知らせします。
今は、スーパーマーケットなどで手軽に手に入りますが、 一年に一度、季節を感じながら、ご家族と、友人と楽しみながら味噌を仕込んでみてはいかがですか? 私も、今年は一人で仕込みましたが、来年は、たくさんの方と一緒に味噌を仕込み、一年後、それぞれ自慢の味噌を持ち寄って、 食べ比べをしてみたいなと思っています。
Facebookページでは、みなさんの自慢のレシピや味噌づくり体験談などのコメントをお待ちしております。
(食文化別館HP制作チーム ・ 新井純子/2015.03.05)
味噌づくり 覚え書き
1 大豆を洗い一晩(12時間~24時間くらい)水に浸す
水を吸った大豆は2~3倍にふくれるので、大きめの鍋を使って、たっぷりの水に浸す
2 一晩水に浸した大豆を煮る
最初は強火、煮立ったら弱火で大豆が柔らかくなるまで煮る(4時間くらい)
圧力鍋を使って煮ると早く煮える
親指と小指で挟んで簡単につぶれるくらいの柔らかさが目安
3 大豆が柔らかく煮えたら、ざるにあげ、熱いうちにつぶす
煮汁は、あとで使うのでとっておく
大豆は、粒が残っていても問題ない。粒が少し残っていた方が手作りらしくてよい
4 大豆が温かいうちに、塩きり麹(麹と塩をよく混ぜ合わせたもの)と合わせ、むらがないように混ぜ合わせる
5 大豆の煮汁を加えながら、耳たぶくらいの柔らかさになるように硬さを調整する
6 ちょうどよい硬さになったら、野球ボールくらいの大きさに味噌を丸め、味噌玉をつくる
7 仕込み用の容器に、空気が入らないよう容器の底に投げつけるように詰める
カビ防止のため、できるだけ空気が入らないようにする
8 味噌の表面を平らにし、ラップを張り、落としぶたをして重石をのせる
9 ふたをして、新聞をかぶせてひもでしばり、冷暗所で保管する
梅雨あけくらいに天地返しをして、秋になり気温が下がってくる10月から11月頃が食べ頃の予定
※一年中仕込むことができるが、「寒仕込み」といって1月から2月の寒い時期に仕込んだものは、 冬から春、夏へと、ゆっくり時間をかけて発酵させるため、味に深みが出ておいしく仕上がる。